『 星の花 』 ・・・アナタは・・・誰・・・? 真っ白な世界に、アナタはいつも立っている。 そして、アタシに微笑みかけるんだ。 とても懐かしくて・・・ とても・・・切なくて・・・ 胸が苦しくなるんだ・・・ ――― なんでだろう ――― 会った事もないのに・・・ 『アナタ ハ、ホントニ ダレ ナノ?』 りっぷは、目をそっと開けた。 自分でも気づかないうちに、 瞳には、薄っすら涙があふれていた。 また・・・この夢・・・ 話し掛けたところでいつも、目が覚める。 この不思議な夢を何度も見ていた。 会った事もない見知らぬ男性・・・。 どこかで会ったのかな・・・? 島のどこかで見かけた・・? りっぷは、起きたての頭をフル回転して、記憶をたどった。 (´〜`;)う〜ん・・・・・ やっぱり・・・会った事も・・見た事もない・・・ りっぷは、考えているうちに、 また夢の中へと引きずり込まれていった。 冷たい木枯らしが吹きつける 初冬。 りっぷは、いつもより足早に歩いて、 食料をかき集めていた。 早く帰って、暖かい暖炉のそばで、ぬくぬくしたぁ〜い!! そう思いながら、向かい風の中、 りっぷは、食べ物を探していた。 夏や秋のように、たくさん果物がなかった。 冬になれば、雪が降り積もり、果物すらなくなってしまう。 そうなると、貝を売ってお店に行くしかなくない。 もうすぐ来る真冬に備えて、できるだけ多く食料を集めていた。 小走りに走りながら、木の陰や茂みを探し回ったが、 すでに、栗でさえ落ちていない。 りっぷは、海岸に貝が打ち上げられてるかもしれない と思い、走り出した。 ぉお!!(゚ロ゚屮)屮 wあんなところに貝落ちてる!!w それは、普通の貝よりも、高く売れるトゲトゲ貝だった。 海岸に出た時―――。 拾いに走り出した りっぷの足が、ピタっと止まった。 そのりっぷの視線の先には・・ あかね色のキレイな翼を持つ鳥が、海岸に腰をかけていたのだ。 りっぷは、そっと近づいて行った。 まるで、魂が引き付けられるように・・・ 「ぁ・・・あの・・・」 りっぷに気づき、あかね色の小鳥がゆっくり振り向いた。 りっぷと同じ歳くらいの女の子だった。 少し強い北風に吹かれ、あかね色の羽がバサバサと揺れた。 姿が懐かしいというのではく・・・ その彼女が持っているオーラが、 とてもとても懐かしく感じた。 女の子は、ひどく悲しい瞳をしていた。 氷のように冷え切った海が、高波をアタシ達がいる海岸に、 突然打ち寄せてきた。 りっぷ達は、冷たい海水をかぶり、ブルブルっと体を震わせた。 「濡れちゃったね(><;あの・・うちで良かったら・・」 「この近くだし、うちに来ない?」 りっぷが、女の子に優しく話し掛けた。 その子は、じっと不思議そうにりっぷの事を見つめていた。 「こっちだよww」 りっぷは、すかさずトゲトゲ貝を拾うと、 このままだと風邪ひいちゃうと思い、 女の子の手を無理矢理引いて歩きだした。 その女の子は、さつこと言う名前だった。 りっぷは、さつこと一緒にいると 何故かとても優しい気持ちになれた。 さつこの為なら何でもしてあげたいと思った。 りっぷに警戒しているのか口数の少ないさつこだったが、 りっぷは、優しく話し掛け、 タオルと暖かいスープを用意した。 タオルで、パサパサとさつこの頭を拭いてあげると、 ほんの少しさつこの表情が和らいだ。 さつこも、りっぷといると心が安らぐようだった。 りっぷとさつこは、コーンスープを飲みながら、 不思議そうにお互いを見つめた。 昔から知っているような感じがしていた。 それは・・・さつこも同じだった。 さつこが、そんなりっぷの事を信用したのかのように、 ゆっくりと話始めた。 「アタシね・・・春に家飛び出したままなんだ〜」 「自分の居場所がなくて・・海眺めてるしかなかったの・・」 さつこは、うつむいていた。 きっと、今まで一人で寂しかったのだろう・・。 「それは、つらかったね・・・」 りっぷが、寂しそうな目をした さつこの事を 優しくフワリと抱きしめた。 さつこは、暖かなりっぷの温もりに安心したのか 涙をポロポロとこぼした。 「大丈夫wwアタシのうちにずっといなよw」 自分でも知らない間に、りっぷは、くちばしっていた。 りっぷは、今日会ったばかりなのに、 さつこと ずっと一緒にいたいと思っていた。 りっぷは、今まで一人だった。 さつこがいてくれたら、どんなに楽しいだろう・・そう考えると、 りっぷの心が、嬉しい気持ちでいっぱいになった。 そんなりっぷの気持ちに応えるかのように、 りっぷの羽の中で、コクンと、さつこは頷いた。 それから、りっぷとさつこは、一緒に生活を始めた。 一人でいるのが当たり前になってた りっぷにとって、 さつことの生活は、素晴らしいものだった。 知らない間に、身についた孤独な心に、 ランプがついたような感じだった。 さつこは、りっぷの心を優しく灯してくれた。 今まで、何でもなかった風景が・・ 全ての物が、色鮮やかに目に映った。 そして、ほんの些細な事でも、 とても嬉しい気持ちにしてくれた。 雪が降ると、ハラハラと舞う雪に、心が躍り、 今まで以上に嬉しい気持ちになった。 『さっちゃん!!雪!雪だよ!!w』 りっぷは、早くさつこに教えたくて駆け足になった。 教える人がいるのは、なんて嬉しい事だろう。 そして、二人で肩を並べて、窓の外をいつまでも見つめていた。 さつこは、りっぷに沢山のケーキを焼いてくれた。 それは、今まで食べたケーキよりも、 ずっとずっと美味しく感じた。 自分のために作ってくれる料理。 それは、心がこもっていて、 どんな高級レストランの料理よりも ずっとずっと美味しいものだと知った。 甘いもの大好きなりっぷが、嬉しそうにパクパクと ケーキを食べている姿に、さつこもとても嬉しい気持ちになった。 食べ終わると、『明日も作ってね!w』と無茶を言うりっぷに、 さつこは、『明日も、美味しいもの作ってあげるねw』と、 優しく微笑んだ。 二人でいることが、とてもとても心の安らぎだった。 りっぷは、さつこと一緒にいる雰囲気がとても好きだった。 さつこが、ちょっといなくなると、とても寂しくなり いてもたってもいられなくなり、探し回った。 さつこが悲しい時は、一緒に泣いた。 さつこが楽しい時は、りっぷもとても嬉しい気持ちになった。 そして、さつこもりっぷに、とても優しかった。 バカな事をしても、さつこは、思いっきり笑ってくれた。 だだをこねた時には、一回だけだよって、 目元が笑ってるさつこがいた。 困った時には、いつも親身になって手を貸してくれた。 りっぷが、間違っている時には、厳しく叱ってくれた。 りっぷにとって、さつこは、一番の友達になった。 そして、それは、さつこにとっても同じだった。 お互いを信じ、いつしか・・・ 家族のような大事な存在になっていった。 家族がいたら・・・wこんな感じなんだろうな・・w りっぷは、窓の外の降り積もった雪を見つめていた。 寒さが一層厳しくなったが、 りっぷの心は、とても暖かかった。 暖炉とクリスマスのキャンドルの火が、 二人の家を暖かく灯していた。 暖かな春の日差しが、積もった雪を少しずつとかし、 また、新緑が木々に、そして大地に芽吹いていた。 そして、りっぷの庭に植えてある沢山の花たちも、 いっせいに、つぼみをふくらませた。 この花が咲いたら・・・w きっと、さっちゃん驚くだろうな・・・w りっぷは、驚くさつこの顔を思い浮かべ、 クスリと笑い、その つぼみを優しく見つめた。 りっぷは、さつこと、 ずっとずっと一緒にいられると・・・ 思っていた。 「家に帰ってみる・・・」 と、さつこが、突然りっぷに言い出したのだ。 もちろん さつこは、りっぷとの生活に 不満がある訳ではない。 毎日が、とても楽しくて楽しくて、 こんな場所は他にはないと思うくらいだった。 しかし、生活していくにつれて、自分から家を出たものの、 家族のようなりっぷを見て、自分の家族を 重ね合わせて見るようになっていた。 「大丈夫wまた、りっぷの所に戻って来るからw」 そう言うと、さつこは、りっぷにいつものように微笑んだ。 そして、りっぷは、「必ず帰って来てね(><;」 と、さつこを送り出した。 さつこは、りっぷを一人残し家路に向かった。 りっぷは、さつこがいない部屋に、チョコンと座り、 いつもよりも、とても とても広く感じるこの部屋を しょんぼりとただ見つめていた。 そのうち、春の花々が、春を運んで来たかのように、 りっぷの庭を可愛らしく彩った。 チューリップが咲き。 スミレの花が咲き。 パンジーの花が咲き。 そして、辺りの野原には、たくさんのタンポポやつくしが、 いつの間にか、土に根をはり逞しく咲いていた。 りっぷは、その咲き乱れた庭を一人ぼっちで眺めていた。 この花が咲くまでには、帰ってきて欲しいなぁ・・・ りっぷは、まだ花の咲いていない ききょうの鉢をそっとなでた。 初夏に、ブルーの星型の花を咲かせ、 その姿は、凛々しくて、とても涼やか。 りっぷは、その青く澄んだ花が、とても好きだった。 この花に出会った時、りっぷは、心が震えるほど、 何かを感じ、それからというもの、 ききょうの花を大事に大事に育ててきた。 何でこの花に、これほどまで執着するのか・・ 自分でもわからなかった。 りっぷは、ききょうの鉢を優しく抱きかかた。 さっちゃん・・・早く帰ってきて・・・ 春の風が、寂しいりっぷの心を吹き抜けていった。 りっぷは、またあの夢に出てくる青年の夢を 見るようになっていた。 それは・・・あの時以上に、鮮明なものだった。 心が苦しくて、何度も目が覚めた。 彼は、目に涙を浮かべていた。 なぜ・・・悲しいの・・・? なぜ・・・泣いてるの・・・? りっぷの言葉も届かないまま、 その青年は背中を向け歩きだした。 はるか遠くに行ってしまいそうな気がして、 りっぷは、手を伸ばして、走り出すが、 その距離は遠くなるばかり・・・。 小さくなっていく彼の背中をずっと見つめていた。 ――― そんな夢 ――― りっぷは、ひどく悲しい夢に、押しつぶされそうだった。 さつこが、どこか遠くへ行ってしまうのではないかと とても不安になった。 今ごろ・・・家に無事に着いたかな・・・ りっぷは、天井を見上げて、さつこの事をとても心配した。 その日を境に、その青年の夢を毎晩みるようになった。 それは、まるで、知らないストーリーを見ているようだった。 そして・・・今まで白かった世界に、背景がついた。 島にいくつかの建物が、綺麗に立ち並んでいた。 その建物の先には、大きな階段が続き、立派なお城があった。 青年は、その島の王子だった。 王子には、愛する姫と幸せに暮らしていた。 王子と姫は、毎日平和を祈り、 島の人たちに平和を呼びかけていた。 ところが・・・ ・・・ある夜、突然、 王子達のお城は、大きな炎に包まれた。 それは、この島を略奪するという 欲望が生み出した醜い争いだった。 王子は、姫の手を取ると、 襲い掛かる炎と煙から必死に逃げた。 あらゆる窓からは、真っ赤な炎を噴出し、 とうとう、王子と姫は、逃げるところがなくなってしまった。 あらゆる手段を使ってでも、 王子は姫だけでも生きて欲しかった。 これ以上先にも後にも進めない・・・ 王子は、窓から外を見下ろした。 沢山の敵が、見えたが、うまくいけば海に飛び込む事ができる。 そう思った時だった。 あまりの煙に、姫はその場に倒れてしまった。 「アタシの事はいいから・・お願い・・早く逃げて・・」 王子は、逃げる事をためらった。 愛する姫を置いて行けるはずがなかった。 「生きるんだよ!姫!」 王子は、姫を抱きかかえると、強く姫の手を握った。 姫は、力なく首を横に振った。 たくさん煙を吸い込み、 もう・・・体が動かないようだった。 あなただけでも・・・ 生きて・・アタシの分まで・・ 大丈夫・・・ アタシはあなたの事を決して忘れない・・ 争い事のない・・世界になったら・・ アタシたち・・・生まれ変わって・・・ ・・・今度こそ・・・幸せに暮らそうね・・ ・・・忘れないでね、アタシの事・・・ ・・・いつまでも、愛してる・・・ そう言うと、姫はパタと王子に もたれ掛かるようにして息をひきとった。 王子は、強く強く姫を抱きしめ、 姫を殺した『争い』をひどく憎んだ。 王子は、頬からとめどなく流れ落ちる涙をぬぐうと、 窓から大きくジャンプして、海へと飛び降りた。 ―――争いを止めるために・・・ 王子は、今まで、封印してきた剣を振りかざした。 止めるまでは、死んでも死にきれない・・・ 姫のためにも・・・ 争いへの怒りが、王子の力を最大限に引き出していた。 王子は、記憶がなくなるくらい 無我夢中に、敵に立ち向かった。 その強さは、計り知れないものだった。 そして、この島を戦略しようとした敵は、 恐れをなして、島から遠のいて行った。 王子は、燃え崩れた城をただ呆然と見つめ、 そして・・・ 姫がいるであろう焼け跡まで、ゆっくり歩み寄ると、 ひざまずき、泣き崩れた。 朝焼けが、何事もなかったように、 焼け野原をオレンジ色に染めていた。 目が覚めると、りっぷの涙が頬をつたっていた。 なんてことを――――。 最後まで、その夢を見ると、 りっぷには、不思議とその街並みが、どこの島かわかった。 そして・・・ そこに、どうしても行かなければいけないと感じた。 ベットからぬけ出し、りっぷは、その島へ走り出した。 今まで、行った事もない島なのに・・・ その島がどこにあるのか・・・ 方角さえも、記憶に・・・ いや・・体が知っているかのように りっぷは、ひたすら泳いでいた。 この海の先にあると・・・確信していた。 りっぷは、どこまでも続く水平線をまっすぐ見つめ、 小さな翼を懸命に動かし、前へ前へと進んだ。 しばらく、進むと・・・ 緑色の大地が見えてきた。 そこには、もう・・お城の姿は全くなく、 街の遺跡と・・・ お城へと続く階段だけしか残されていなかった。 あれ・・・ その大きな階段の上に誰かが立っていたのだ。 見た事ある あかね色をした後ろ姿。 ・・・そう・・・ そこには、さつこの姿があったのだ。 決して、見間違いではない。 さつこの姿がいくら遠く小さくても、りっぷには、 それがさつこだと当てられるくらい自信があった。 りっぷは、夢ではないかと、目をゴシゴシと擦った。 夢じゃ・・・ないっ!!! 「さっちゃ〜〜〜ん!!」 りっぷは、叫びながら、さつこの元へと駆け寄った。 さつこは、祈るように手を合わせ、 そのすっかりなくなった城跡を見つめていた。 そして・・・ 涼やかなブルー色の花を静かに、たむけていた。 その花は・・・ りっぷの好きな ききょうの花だった。 静かにさつこは、振り向き、この島によってから、 りっぷの元へ行こうとしてたと いつもの笑顔をりっぷに向けた。 そして、この時期、いつもココへ来て、 このお花を供えていると・・・ さつこは、ゆっくりと話出したんだ。 それは、りっぷが見たその夢と全く同じ話だった・・・。 「そ・・・それ・・・!!」 「アタシも夢で見たよ!」 ぇ?と、さつこは、りっぷを見つめた。 りっぷとさつこは、信じられない事に同じ記憶を持っていた。 もしかして・・・ アタシたちが・・・あの王子と姫の生まれ変わり?! りっぷとさつこは、驚きを隠せなかった。 あの夢は・・・夢でなく・・ 生まれる前の記憶の断片だったのだ・・。 王子は、姫が亡くなってから、必死にこの島を守り通し、 ききょうの花を亡くなった姫に、たむけ続けていたという。 「アタシたち・・・」 「きっと生まれ変わっても、ずっとずっと一緒なんだねw」 声も顔も違うけど・・・。 いつか どこかで 魂と魂が呼び合うように、出会うんだろうね・・・w りっぷとさつこは、その階段に腰掛け、 お互いの手を握りながら、 はるか遠くの海を見ていた。 アタシが、この花が好きなのって・・・ きっと・・・ 王子様が、いつもいつも・・・ 供えててくれたからなんだね・・w 全ての謎がするすると解けていく・・・ りっぷは、王子とさつこの優しさに、涙があふれてきた。 ずっと・・・ずっと・・・アナタの事を探していたんだ・・ りっぷは、姫の心が、 さつこは、王子の心が伝わってくるのがわかった。 そして、本当の再会をしたことに、心から感謝した。 りっぷとさつこは、いつになく強く強く手を握っていた。 「でもwアタシたちのおうちはココじゃないよw ・・・おうちに帰ろう・・・さっちゃんw」 と、りっぷは、ふと立ち上がり言った。 「そうだねwwアタシたち、王子様とお姫様のためにもw   幸せにならなくっちゃねwww」 さつこが、空へ大きくジャンプした。 さつこが、「ねwお姫様w」と、 冗談まじりに手を差し伸べた。 りっぷは、さつこのその翼の上に、そっと翼を重ね合わせ、 「そうねw王子様w」と笑顔で返事をした。 そして、りっぷのたくさんの花が咲く家へと翼を泳がせた。 家に着くと、いつの間にか、ききょうの花が見事に咲いていた。 それは、まるで、りっぷとさつこの幸せを祈るかのようだった。 りっぷとさつこは、寄り添いながら、 その ききょうの花をいつまでも、いつまでも眺めていた。 この ききょうの花言葉知ってる? ふと、さつこが、りっぷに言った。 考え込むりっぷを見て、さつこは、優しく答えた。 その花言葉は・・・w 『 変わらぬ愛 』だよ・・・wと。 ― END ―    メニュー
♪夢の痕

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