『秘密の花園〜約束の場所』 誰もが、心にある思い出の欠片。 鈴の心に秘めたその想いは、 今もなお、あの花園で眠っているーーー。 「鈴姉ちゃんwどぉ??具合は?」 あの巨大害虫を倒してから数日がたつ。 かりとちぇりこが、お見舞いに毎日行くようになっていた。 かりは、傷もたいした事なく、毒も消え、ピンピンしていた。 「だいぶ良くなったよwこれも、かりとちぇりのおかげw」 少し起き上がると、鈴はニコリと笑う。 「良かったぁ〜!」 かりとちぇりこは声をそろえて言う。 「ぁwそぉそぉ、あのぽよってペンギンどうしてる?」 鈴が心配そうに言う。 「ぽよも、だいぶ良くなってるみたいだよw」 ベットにちぇりこがへばり付きながら、 嬉しそうにピョコピョコ跳ねた。 「そかぁそかぁーー」 ぽよかぁ・・・ 窓から入ってくる秋の風を感じ、 鈴は外の景色に目をむけた。 紅葉している木々の葉がゆらゆら揺れて、落ち葉が舞う。 忘れようとしてきた過去。 ぽよを見て、思い出したあの人の面影。 穏やかで優しい風は、ベットで寝ている鈴の心と羽を フワリと揺らした。 ドンドン!!ドンドン!! 静寂を壊す大きい物音がして、鈴は我に返った。 「ぁ。はぁ〜〜ぃ」 「鈴姉ぇーはwちゃんと寝ててねw」そう言うと、 しっかり者のかりが鈴の代わりに玄関に向かった。 お客さんのようだ。 誰だろう〜・・・ 何やら話が聞こえる。 「鈴ねぇ〜あにょね。 鈴ねぇーたん助けてくれた人たちが来てるぉ」 ちぇりこが様子を報告しに、 ちょこちょこ行ったり来たりしている。 入ってもらってと鈴が伝えると、しばらくして、 2人の男性が家の中に入って来た。 「はじめまして、鈴さん、ついきちですw」 「どもw志欄ですw」 愛想よく笑いながら、傷の具合を聞いてくる。 「それは、それは・・・ こちらからお礼に伺わなければいけないのに・・・ すいません(><;」 鈴は、起き上がり、丁寧にお礼を言った。 「いやぁ〜〜ケガ人なんですから、 ゆっくり休んで早く治してくださいねw でも、なんですな。女性の方なのにw あんな怪獣のような害虫を倒してしまうなんて!!w 本当に街のみんなも、だただた驚いてますよ!w」 2人とも興奮したように話だす。 鈴とぽよは、街中の噂になっていた。 「ぃぇw害虫を倒してくれたのは、ぽよですよw」 アタシの代わりに、体をはって助けてくれた。 もし、ぽよがいなかったら・・・ 考えただけでも、ぞっとする。 あの人もそうだった・・・ アタシの命を助けてくれたあの人・・・ 体をはって彼もまた、鈴の事を助けてくれた。 あの人との出会い。 それは、まだ、アタシが・・・ 戦いにも慣れていない子供の頃ーーー。 まだ、未熟なアタシは害虫島へ行ったんだ・・・。 「うゎーーー!すごーーぃ!!」 「ウジャウジャだーー☆」 離れ島から、害虫がワサワサ動きまわる様子を見て、 楽しそうに羽をバタつかせて鈴は喜んだ。 ぉし。倒してみるかな・・・ 小さい鈴は、お母さんに喜んでもらいたかった。 父はいない。 鈴が物心つく前に、出て行ってしまったらしい。 ずっと2人家族で、毎日、鈴のために働く母を見てきた。 ムシ1匹でも倒したら、きっと・・・ ママが喜んでくれるかもしれない・・・ ママの笑顔が見たい・・・w そんな些細な願いに、鈴は、海に勢いよく飛び込み、 害虫がいる島に向かって行く。 「ぅゎ〜〜〜〜・・・」 子供の鈴には、少しのお金(ドングリ)しか持っていない。 害虫の事をよく知らなかった鈴は、所持金を あっと言う間に取られ、毒をさされてしまった。 フラフラで視界がゆがむ。 ままぁ〜〜・・・ た・・・すけて・・・ 鈴はフラフラで逃げる事ができない。 積み重なるようにして攻撃してくる害虫。 何度も何度も毒をさされ、もぉ鈴の意識が限界になったその時。 ピョコン!!! 誰かが舞い降りてきた。 「ぅあ!!!」 「大丈夫か?!」 白い羽を持つアヒルは、鈴がやられている状況を見て いちもくさんに、小さな水かきをうまく使いながら、 海を即行で渡ると、鈴に群がる多数の害虫を 見事な腕前で倒していった。 フラフラになっている鈴を抱きかかえ、離れ島へ避難した。 意識がもうろうとしてる中、白いそのアヒルを見て言った。 「あなたは・・・誰・・・?」 「俺は、ふわw」 ・・・・たすけてくれて・・・ありがと・・・ 鈴は、白いその暖かな羽に包まれ、安心したかのように気を失った。 ガサガサと害虫たちが、すぐ隣の島でザワついている。 気がついたのは、もぉ夜更けだった。 しまった!お母さんが心配してる!! 鈴は、『しまった!』とばかりに起き上がった。 「ぉ、大丈夫か?」 「だいぶ、遅くなっちまったな」 「家まで送るぞw」 ふわは、寒くならないように寄り添って、火を灯してくれていた。 「ぅ・・・ぅん。ありがと・・」 鈴は、おこした焚き火を消しているふわの優しい横顔をずっと見ていた。 「ありがとうございます・・・!」 「本当に、なんとお礼を言ったらいいのか・・・」 鈴の母は、深々とふわに頭をさげた。 「この子ったら!!」 「( `・ω・´)っ))メッ!!」 鈴は首を低くしながら、お叱りの言葉をあびた。 「ママ・・・ごめんなさい・・」 「お母さん、そんなに叱らないであげてください」 ふわは、鈴にウインクしながら、優しく微笑む。 ふわが差し出したものは、鈴を助けた時に稼いだ害虫の山。 「こ・・・これは・・。」 鈴の母は、目の前の害虫の多さに驚きを隠せない。 「これは、鈴ちゃんが、お母さんにって稼いだ害虫です。 これをプレゼントしたかったみたいで」 「・・・ぇえ?!そんな危険な事を・・・」 「これからは、あんな危険な場所に行ってはダメだぞw」 ふわは、しゃがんで鈴の目線になるとポンポンと頭をなでた。 「あまり鈴ちゃんを叱らないでくださいな」 そう言うと、ふわは去って行った。 「この子ったら・・・」 鈴の母の目には涙があふれていた。 「害虫島なんて・・・もぉ行ってはダメよ」 「こんな害虫なんかよりも、鈴の方が大事なんだから・・・ 大切な私の娘なんだから・・・」 優しい母親の香りのする胸に包まれ、鈴はコクンと頷いた。 その日を境に、ふわと鈴は、よく遊ぶようになった。 害虫の戦い方を教えてもらった。 ふわのおかげで、他の誰よりも強くなった。 木の上の果物の取り方を教えてもらった。 ふわのおかげで、どんなに高い木の上の果物も、 取れるようになった。 鈴は、ふわにいろいろな事を教えてもらった。 ある日の暑い昼下がり。 ふわは、鈴に離れ島の行き方を教えいた。 突然の雷雨に襲われ、2人は離れ島の木の下で 雨がやむのを待つ事にした。 「うわ〜〜〜すごい雨!!」 「ほんとだなー」 木下とはいえ、雨が吹き込んでくる。 「羽がびしょびしょだよぉ〜〜(;m;)」 鈴は自慢の羽をブルブルとふるわせた。 「大丈夫wすぐやむさw」 空を見上げながら、ふわは言った。 「ねぇねぇwふわぁ〜〜〜」 「ん??なんじゃいw」 ふわはいつも冗談ぽく返事をする。 「ほんと、物知りだよねぇ〜w」 鈴は、コテっとおしりをつき座った。 その横に寄り添うようにふわも座る。 天気とは裏腹に、2人でいる空間は、いつでも 春の日のように穏やかだった。 ふわの予言通り、雲の隙間から徐々に晴れ間が見えてきた。 「ぉwあがったなw」 「ほんとだーーー!w」 「すごぉーーぃ!ふわ!!」 コロコロと鈴は笑う。 「ぁ!!見てふわ!!虹だよ!!」 鈴が指差す先に、大きな虹があった。 「ぉおおwwwキレーだなw」 「(*・∀・*) ぅんっ!」 「そぉだ!!ふわ行こう!!」 「ぇwまさか虹の所まで行くとか言わないだろーなw」 「そぉーー!行こう!!」 虹に向かって、更に泳ぎだす鈴。 「ぉぃぉぃw待てよぉーw鈴〜〜w」 鈴の後を懸命にふわは追いかける。 「困ったお嬢様だなw」 やっと鈴に追いつき、優しい眼差しで言う。 たどり着いたそこは、ふわでもたどり着いた事もない離れ島。 そこには、沢山の花が咲きみだれていた。 その花の中で、鈴はクルクル回って遊んでいる。 「虹追いかけてきたら、見つけちゃったぁー!」 「ヽヽ(≧▽≦)// キャー!」 無邪気な鈴に、ふわはフフっと笑った。 「アタシたちの花園だね!w」 「誰にも内緒だよ!w」 鈴は、嬉しそうにふわを見つめる。 ふわは、そんな鈴にそっとピンクのチューリップを手渡した。 「さっき、そこで咲いてたんだw」 「これだけ、ピンクだったんだよw」 驚いたように、鈴は、そのピンクのチューリップを受け取る。 「キレー・・・。こんな色のチューリップ見たことないょ・・・w」 「ほんと・・ありがと!!w」 鈴は、ふわの頬にチュっとした。 今度は、ふわが驚いた。 「これこれ・・・w」 まいったwと、ふわは笑う。 雷雨の後の晴れ間は、いつになく太陽がまぶしく 目に映る風景がいつもよりキラキラと見えた。 「鈴がwもう少し大人になったら・・鈴をお嫁さんにしてねw」 手にしているチューリップで顔を隠し、少し照れながら鈴は言う。 「あははwwwこりゃwまいったなw」 ふわは、小さな鈴に笑顔を向けた。 「じゃあ、大きくなったら、また、この花園に一緒に来ようなw」 「(*・∀・*) ぅんっ!そしたら、今度はアタシがふわにピンクの チューリップ探してあげるからねっ!w約束だよっ!」 ふわと鈴は、羽と羽をつないで指きりならぬ、羽きりをした。 そして、いつまでも、笑いあっていた。 2人は幸せだった。 あの事件が起こるまでは。 それは、突然の出来事だった。 鈴が、落雷で倒れてくる木の下敷きになってしまったのだ。 鈴の母も、鈴をかばい木の下敷きに・・・ 発見したのは、やはり、ふわだった。 「・・・ふゎ・・・ふ・・ぅ・・ゎ・・」 木の下から、小さい鈴の声が聞こえてきた。 「いいか。それ以上しゃべるな!」 そう言い捨てると、大きな大木を一人で持ち上げようとした。 木の破片が、ふわに突き刺さる。 木にふわの血が大雨と一緒に流れる。 「とりゃ〜〜〜!!!」 鈴の小さな体は、ちょっとした隙間から這い出る事ができた。 もう少しで、鈴の母を救出できる。 ズブズブと木の破片が、ふわの体をボロボロにしていく。 ふわの真っ白な体はみるみる間に真っ赤に染まっていく。 「ぅりゃっ!!」 鈴が、力をふりしぼり母を引っ張る。 救出できたものの、鈴の上におおいかぶさるようにいた母は、 すぐに息を引き取った。。。 そして、数日後、 傷口から、ばい菌が入ってしまったせいなのだろう。 ・・・ふわも、立て続けに、死んでしまった。 鈴は一人ぼっちになった。 小さな鈴は、一気に大事な人を2人も失ってしまった。 唐突すぎて、涙も出ない。 鈴はぼんやり、色のない風景を見つめていた。 虫の音が聞こえてくる夏の終りの出来事だった。 ←back   next→ メニュー
♪忘れられた花園

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