『天使と悪魔の交差点』
出会いの交差点。
同じ道に進むのか・・・
別の道を選ぶのか・・・
それは、自分次第。
しかし、そこに見えるのは・・・
それぞれの瞳に映る希望の光。
青い羽を持つ
弟者
無表情で、上空から地を見渡した。
青空の下、楽しそうに、はしゃぎ立てる鳥たち。
鳥たちに、どんなに近寄っても、
弟者を見つけられる鳥はどこにもいない。
生きている鳥には、弟者の姿が見えないのだ。
・・・なぜならば・・・
弟者は、悪魔だから。
生きている鳥に触れれば、
その命をいつでも奪う事ができる。
1日に最低3羽の命を奪う事が、弟者の任務だった。
毎日・・・毎日・・・
弟者は、鳥たちを空から見渡し、
その命を狙っていた。
しかし、弟者は、ただ、命を狙っているだけではなかった。
生きる事を放棄した鳥、
生きる希望を捨ててしまった鳥、
失望し、立ち上がることができない鳥、
そして、一生をまっとうした鳥だけ。
生きる希望が少しでもあれば、
弟者はその鳥から決して命を奪う事はしなかった。
弟者は、今日も死の空気をたどりながら、大空を飛び回る。
病気にふせ、ぼんやりと空を見つめる
一匹の鳥の元へ、舞い降りた。
完全に、生きる事へ望みがなくなり、
空気を見ているようなその視線に
弟者は悲しい表情を見せた。
弱々しくやせ細ったその肩に、そっと優しく触れると・・・
その鳥は静かに、息絶えた。
「 ・・・お疲れ様・・・ 」
弟者は毎回、どんな鳥にも、
心を込めて、この言葉を贈った。
病気にかかり、どんなにツライ思いをしてきたのだろう。
弟者はじっと、その鳥を見つめた。
苦しそうにゆがんだ表情だった。
いや・・悔しそうにかもしれない。
最期の最期まで、きっと、
何か想う事があったのだろう・・
誰か想う鳥があったのだろう・・
すぅーーと、その鳥の体から白く光る魂が出て、
上へ上へと舞い上がって逝くのがわかる。
弟者は、魂が見えなくなるまで、見送ると、
この世をたった鳥たちの
悲しみも寂しさも、
無念な思いも、
全て受け止め、
澄み渡った この大空のようになるように、
真っ青な空へと羽ばたいた。
もぅ、話す事のない鳥たちに
何度、話しかけ、
何度、大空を舞ってきたのだろう・・・
数知れないほど。
たぶん、この世が終わるまで、続くのだろう。
悪魔はどこから来たのか。
なぜ、鳥として生まれて来れなかったのか。
弟者は、そう思い、自分のいる立場を恨んでいた。
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♪曇り空