『クリスタルストーン〜希望の光』 少し灰色がかった力強い翼を持ち、 誰にも負けないというギラギラとした 自信にあふれている瞳を持つ鳥。 ゆず。 意思が強く、夢も大きい。 ゆずは、いつも技を見つけては、 自分のものにしてきた。 その片方で、じっと静かに修行を続けるマー。 マーは、ゆずのように心を表に出すことはなかったが、 誰よりも強い忍耐を持っていた。そして、 目に見えないものを心でみる鋭い直感力と 瞬発力を持ち備えていた。 俺達の性格は、まるで正反対だった。 いつも明るい表情で、思った事は言わないと 気がすまないゆずに対して、 温厚なマー。 マーは、そんな無邪気なゆずを静かに見守っていた。 俺達の夢は同じものだった。 もっと、もっと、強くなりたいと―――。 そして、俺達は、旅を続けたんだ。 負けん気の強いゆずは、 自分より少し強いマーを超えたいと いつも思っていた。 マーも、また、 いろいろな事に挑戦しようとする ゆずのその向上心にいつも感心していた。 俺達は、毎日、毎日、 朝から晩まで、 泥だらけになるまで、修行を続けた。 どしゃぶりの雨の日も。 冷たい雪が降続いた日も。 容赦なく照りつける夏の日にも。 木をなぎ倒すくらい大きい嵐が来ても。 それは、休む事がなかった。 そして、何でも、お互いに競い合っていた。 いつしか・・・ 俺達はライバル同士になっていった。 害虫に襲われた島を見つけた日には、 一日もかからず、一気に成敗した。 恐ろしいほどの害虫の数でも、 二人でいれば、朝飯前だった。 俺達は、海の中にいる恐ろしいサメにも挑んだ。 俺達の何倍も大きい体を持ち、鋭い牙を持っていたが、 俺達には恐くはない。 ゆずが、無邪気に笑いながら、 サメの尻尾にまわるとホイッと、 その誰よりも強い力で、サメを水面に叩きつけると、 あっという間に、気絶してしまった。 ゆずとマーは、無敵だった。 自分達よりも、強い奴なんていないと思っていた。 沢山の修行の旅に、疲れた時は、 お酒をくみ交わし、 これからの事や夢の話をたくさんした。 ゆずは、くったくのない笑顔で、無邪気に話した。 それは、何故かマーを安心した気分にさせた。 ゆずには、夢や希望があった。 宝石を散りばめたようなキレイな満点の星が、 夜空に光り輝くある日の夜。 ゆずは、いつもように無邪気な笑顔を 俺に向けて、話し出した。 今、修行している術が完成したら、バラバラになって クリスタルの石を探す競争をしないか?! と。 世界に二つとないクリスタルの石。 その石を持つと自分の潜在能力が引き出され、 最強の力を手に入れる事ができると言い伝えられていた。 ゆずの瞳は、その夜空に光るどの星よりも、 ギラギラと輝いていた。 マーは、そんなゆずに、フフと笑うとコクンとうなづいた。 ゆずの夢に、マーも便乗した。 行くあてもない旅に、俺達は、胸がワクワクした。 ―――そして数年後―― ゆずは、黒い風の術を。 マーは、光の術を。 修行の果てに、手に入れた。 ゆずが、翼を一振りすると、 黒い風が凶器に変わった。 それは、どんな硬い岩も打ち砕いた。 マーの術も、ゆずが手に入れた術に 匹敵するほど強いものだった。 まぶしい光を放ち、光の風が周囲を包むと、 その周りの木々や大地でさえ、 一瞬にして砕け散りなくなっていった。 その威力は、誰もが目を見張るものだった。 そして、俺達は、その最強の力をくれる石を 手にするために、バラバラに旅に出た。 「俺が、先に手に入れてやるからなぁー!!」 と、いつもの笑顔で言うと、 ゆずは、振り返らずに前を歩き出した。 マーは、ゆずと会ってから、少なからず変わっていた。 今まで、自分を押し殺している自分がいた。 しかし、ゆずの前向きな性格に動かされ、 自分に正直に生きるようになっていた。 そして、いつも間にか、希望を心に抱いて歩んでいた。 マーは、旅立っていくゆずの後姿を見て、 ゆずに感謝した。 光り輝く大きな太陽が、俺達の進む別々の路を 導いてるかのようにサンサンと照らしていた。    next→ メニュー
♪そしてボクらは

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