『 四つ葉のクローバー 』 ある穏やかに晴れた日。 ももは、窓の外で楽しく遊ぶ鳥達をいつまでも眺めていた。 体が弱く、病気がちなももは、 小さな頃からベットに寝たきりだった。 ・・・外に出て、たくさんの小鳥達と遊びたい・・・ そう思いながら、 外をただただ、見ているしかなかった。 「もも。ごはん、ちゃんと食べないと 治る病気も治らなくなるわよ」 そう、ももの事を気遣うももの母親に、 何も言わず、ただベットに寝転びぼんやりとしていた。 いつしか、ももの心は真っ暗な殻に閉じこもり カギをかけてしまっていた。 何でも話ができる友達も全くいなかった。 大好きなパンダのヌイグルミをいつも胸に抱いてた。 そのヌイグルミは、決して話すことはない。 ただ、そばにいるだけ。 それでも、ももにとっては、 大事な大事な たった一人の友達だった。 その日も、胸にパンダのヌイグルミを胸に抱き、 羨ましそうに窓の外を見ていた。 そんなももに、緑色の羽を持つばさらは、気がついた。 ももの寂しい眼差しに引き付けられるように、 ばさらは、ももの元へとフワリと舞い降りた。 エメラルドグリーンの大きな翼を持つばさらに、 ももは、目を瞬かせた。 そんなももを見ながら、 ばさらは、優しく微笑むと窓をトントンと叩いた。 ももは、心の扉を開けるように、 窓を恐る恐る開けた。 ももは、ただただ、ばさらを見ていた。 ばさらは、ももが、病弱な女の子だと思い、 優しく手を差し伸べるように、優しく話し出した。 そのばさらの話は、とても楽しく、ももは、 ププwwと噴出して笑い出した。 ももは、そんな自分にハッとした。 なぜなら、こんな風に笑った事がなかったからだ。 毎日、ばさらは、ももの窓へ降り立つと、 ももに、たくさんの外の世界の話をしてくれた。 ももは、そんなばさらの話に、 (*¨)(*..)(*¨)(*..)うんうん と、耳を傾けた。 たくさんの島の話をしてくれた。 そして、石にまつわる伝説話や もんごのすけの銅像の話、 危険な害虫島の話。 そんな ばさらの話は、まるで、 自分が経験したかのような気分にさせた。 ももは、目をときめかせて、ばさらの話に没頭した。 ももは、ばさらといる時間がとても楽しくて、 ばさらが窓辺に来るのが楽しみになっていた。 ばさらもまた、ももにお話をするのがとても楽しく、 ももの所へ行くのが、日課になっていた。 ある穏やかな昼下がり。 ももは、いつものように、パンダのヌイグルミを抱いて、 まだか、まだかと、 ばさらが来るのを待ちわびた。 ももは、窓の外の木漏れ日を優しい眼差しでみていた。 その光が、とてもとても優しく感じられた。 真っ暗闇だった ももの心に、 暖かな日が差していくようだった・・・ この部屋しか知らないももは、 ばさらの楽しい話を聞けば、聞くほど、 外の世界へ行ってみたいと・・ 思うようになっていた ある日。 いつものように、明るく話をするばさらを見て、 ももは、重い口をひらいた。 「ばさちゃん〜・・アタシも・・・」 「・・・外に行きたいよ・・」 いつしか、ももは、ばさちゃんと呼ぶようになっていた。 ばさらは、そんなももを少し寂しそうな目で見て、 「俺が、いつか連れて行ってやるよ!」 と、ももに明るい笑顔を向けた。 「その前に、モリモリご飯食べて、 早く元気になれよww」 優しく元気つける ばさらにももは、 コクンと頷き、約束だよと、ニコと笑った。 ばさらとの約束は、 明日への希望へと変わっていった。 ももは、その日から、ご飯をモリモリ食べた。 そして、元気なって、太陽の下で、 ばさらと沢山遊ぶんだと心を躍らせた。 それは、普通の鳥にしてみれば、 ほんのささいな事だけど、 ももにとっては、それが夢だった。 ももは、その夢を信じていた。 窓から見える瞬く星たちにも毎日お願いした。 そんな時、ばさらが、ももに、 四つ葉のクローバーの話をした。 願い事を想いながら、 四つ葉のクローバーを見つけられたら、 その願いが叶うと・・・ その話を聞くと、 純粋なももは、その迷信を信じ、 いてもたってもいられなくなった。 どうしても、そこに行って、 四つ葉のクローバーを探したいと思った。 ばさらも、そんなももを見て、どうしても、 ももを外へ連れて行ってあげたくなった。 雲ひとつなく、澄みきったブルーの空が続く 晴れ渡った ある日。 ももは、いつも抱いているパンダのヌイグルミを 翼から離して、 ばさらの大きな背中に乗った。 もう、ももは、パンダのヌイグルミがいなくても、 しっかり前を向いていた。 ももは、初めて外の世界に出て行った。 見るものが、全て、初めてのももは、 瞬きするのがもったいないと、大きく瞳を開けて、 ばさらの羽の中で、夢にまで見た外の世界を見た。 「キレ―――――!!w」 ももは、目の前に広がる広大な景色に、 思わず叫んでいた。 目に映るものが全て、キラキラと映り、 ももは、今までにないくらい楽しい表情を見せていた。 ばさらも、そんなももを見て、 嬉しくなり真っ青な大空へ大きく羽ばたいた。 しかし、秘密で抜け出したももは、 夕方に、あのベットへ戻らなくてはいけない・・ ばさらとももは、クローバーがなっている所を 見つける事はできなかった。 それでも、ももは、素晴らしい この外の世界に満足だった。 近くの浜辺に、ばさらは、ももを降ろすと、 肩を並べて、遠くまで続くブルーの海を いつまでも、いつまでも見ていた。 白く柔らかな砂の上に、 透明な波が、日の光を受けてキラキラと輝き、 優しく打ち上げていた。 それから、ももの体調はウソのように回復していった。 両親もお医者さんも、 日に日に明るく元気になっていくももを 不思議そうに見つめた。 そして、とうとう、ももは、 一人で外に出られるようになった。 嬉しくて、嬉しくて、ももは、誰よりも 明るい女の子になっていった。 そんな明るいももに、友達ができた。 たくさんの島にも遊びに行った。 友達とたくさんお話して、たくさん遊んだ。 たくさんの物を見てきた。 たくさんの楽しい思い出を作った。 気がつくと、ももの周りには、 たくさんの友達ができていた。 ふと・・・ ももは、窓辺に、目を移した。 元気になってからというもの、 ばさらは、窓辺に来なくなっていた。 たくさんの友達ができて、 楽しい日々を送っていたが、 ももは、少し寂しい気持ちになった。 あの日、ばさらが外に連れて行ってくれなかったら・・・ 今も、このベットでただじっとしていたのかもれない・・ ももは、初めてばさらの大切な存在に気づいた。 あの頃と変わらない星たちを眺めながら、 病気だった頃を思い出した。 優しいばさらの笑顔を―――。 思い出していた。 次の日。 雨雲が立ち込めていた空を心配そうに見上げていたが、 あの日、ばさらが話しくれたクローバーの話を思い出し、 ももは、外へ飛び出した。 そう・・・ 四つ葉のクローバーを探しに行こう と、 思ったのだ。 そして、アタシを救ってくれたお礼にあげようと・・ 懸命に、ももは、果てしなく続く大きな海を渡った。 ポツリポツリと、いつしか雨が降り出した。 それでも、ももは、振り返らずに泳ぎ続けた。 ずいぶん長い間、泳ぎ、体の弱いももは、 息を切らしていた。 もう体力の限界だった。 その時。 目の前に、緑の大地が見えてきた。 最後の力を振り絞って、ももは、泳いだ。 そして、疲れた体を休めようと、 島の中に足を踏み入れると・・・ そこには・・・ 見渡す限りのクローバーが、咲いていた。 やっとたどり着いたのだと、 ももは、嬉しい気持ちになり、 疲れていた事も忘れて、 そのクローバーの中をクルクルとまわった。 そして、パタと、寝転んだと思ったら、 スヤスヤとそのまま寝てしまった。 シトシト降っていた雨は上がり、 柔らかい草の香りと満点の星空が、 ももを優しく包んでいた。 ももは、次の日から、 四つ葉のクローバーを探しだした。 ところが、すぐには、見つからない。 ももは、草の中に体をうずめ、 土で顔を真っ黒にさせながら、 四つ葉のクローバーを探し続けた。 見つからないまま日が暮れていく。 ももは、こんなに大変な思いをしたのは、 生まれて初めてだった。 ばさらには、幸せになって欲しかった。 ももは、心からそう思った。 そして、何日も何日も探し続けた。 ももの事を、両親がとても心配して 探してる事も知らずに・・・ ・・・そして・・・ やっと―――。 ももは、一枚の四つ葉のクローバーを見つけた。 それは、ばさらの羽のように キレイなエメラルド色だった。 ε⌒Yε⌒Yε⌒Yε⌒ヽ(*′∀`)ノ゙ ヤッター!! ももの羽は、泥だらけで、顔も真っ黒になっていた。 ももは、その真っ黒な顔で笑いながら、 大きくピョンピョンとジャンプして、大はしゃぎした。 来た道を戻り、家路に着くと、お父さんとお母さんが、 ももの事を懸命に探していた。 ももは、両親にこっ酷く怒られてしまったが、 手の中にある四つ葉のクローバーを見て、 クスリと笑った。 体の弱いももは、無理がたたり、寝込んでしまった。 それでも、ももは、四つ葉のクローバーを 大切に本にはさんで、押し花を作った。 嬉しそうなばさらの顔が見たくて、 ももは、すぐにでも、 その四つ葉のクローバーを渡したかった。 しかし、具合が悪く 外には出られない日々が続いた。 渡せる日が来るのだと・・・ ももは、思っていた。 そして、ももの体が少しよくなり、 ばさらのところへ行った。 しかし・・・ 家は、もぬけの殻だった。 ももは、ひどく悲しい気持ちになり、 手にしていた四つ葉のクローバーをヒラリと落とした。 その苦しい胸に、 ももは、ばさらに恋をしていると 初めて気がついた。 ももは、そのガランとした部屋に、 いなくなった ばさらの面影を追っていた。 渡せなかった一枚のクローバーを見つめ、 ももは、ホロリと涙を落とした。 そして・・・ 数年が過ぎたある穏やかな春の日。 いまだに消えないばさらへの淡い恋心を胸に、 あの日のような優しい木漏れ日をももは、見つめていた。 体が弱いももは、また病気をわずらい、 ベットで寝ている日が多くなった。 元気になろうという気持ちとは裏腹に、 日に日に弱くなっていく体に、 ももは、重いため息をついた。 そして、窓の外をいくら見つめても、 ばさらは来なかった。 初めて知る切なさに、ももは、 胸が張り裂けそうだった。 ばさらに会いたいと願う祈りも 星にかわっていった・・・ 想いがつのれば、つのるほど、 ももの体調は悪化していった。 ばさらと会えないくらいなら、 この命がなくなってもかまわないと、 胸に焼きついた ばさらの笑顔を思い出し、 ももは、遠いブルーの空を見つめていた ある日。 ひたむきな ばさらへの想いが通じたかのように ばさらは、ももの目の前に姿を現した。 ベットに横たわるももを見ると、 ひどく悲しそうな顔をしたが、 すぐに、あの頃と変わらない笑顔を向けた。 「・・・ばさちゃ〜〜ん・・w」 ももは、すぐにでも、 ばさらの胸に飛び込みたかったがその力もない。 その再会は、すでに、遅かった・・・ あまりにも、ももは、衰弱していたのだ。 しかし、ももは、嬉しくて嬉しくて、 ももの目から涙が溢れ出した。 そんなももを見て、ばさらは、 あの日、元気になったももを見て、 もう、自分は必要なくなったと思ったと、 ももに伝えると、 弱ったももの翼をヒシと握り締めた。 「やっと・・・ばさちゃんに・・渡せるょ・・・w」 と言うと、ばさらの目の前に、 ももは、あの日渡せなかった 四つ葉のクローバーをそっと差し出した。 ももは、まだ、四つ葉のクローバーを 大切に持っていたのだ。 そして、ばさらは、ももの翼の中にある その四つ葉のクローバーをそっと受け取ると、 ありがとう と、 ももの頬にそっとキスをした。 そして、ばさらは、必ず、ももの体が良くなるように、 四つ葉のクローバーを探しに行こうと決心した。 「ねぇ、ばさちゃんwアタシ・・・」 「また、ばさちゃんと大空飛びたいなw」 もう少し あともう少し・・ ・・・そばにいたい・・・ それは、ももの最後の願いだった。 「よし!!」 「俺たちの四つ葉のクローバーを探しに行こう!」 と、ばさらは、背中にももを優しく乗せた。 ばさらは、もものあまりの軽さに愕然とした。 ばさらは、死を目前にするももを背中に、 空に響くくらい大きな声をあげて、 空高く高くももを乗せて飛んだ。 そして、ももが見つけた クローバーがたくさん咲く島へと翼を羽ばたかせた。 徐々に島が見えてくると、 ももとばさらは、その島の形にハッとした。 そこには・・・ 四つ葉のクローバーの形の島が まるで、二人を待っていたかのように ひっそりとたたずんでいた。 「ばさちゃんwこんなところに・・・w」 「アタシたちの四つ葉のクローバーあったんだね・・・w」 島の上空から、ももは、 嬉しそうに島を見下ろして言った。 ばさちゃんに、出会えて アタシとても幸せだったよ 生まれ変われたら また、ばさちゃんと出会いたいな・・・ そう言うと、ばさらの背中の中で、 一枚の花びらが落ちるように ももは、静かにこの世を去った。 ももは、とても安らかな表情をしていた。 なぜなら・・ ばさらと会って、一生分、懸命に生きてきたから・・ 「ももぉーーーーー!!」 ばさらは、冷たくなったももを背中に、 いつまでも、そのクローバーの島の上を 空高く高く羽を広げ飛んだ。 それは・・ ももの魂が安らかに 天にのぼっていくかのようだった・・・ ― END ―   メニュー
♪純愛モード

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