『 Eternal mind 〜夢の中で 』 【 第一章(永月) 】 ざくざくと音を鳴らしながら冷えて 感覚の無い足をひたすら引きずりながら歩く もう何日歩いたのだろうか… 白い雪の中に灰色の髪を吹雪となびかせた少女が黙々と歩く 北の雪国には誰一人もいない そこを抜けるとすぐに家があると聞いた だが、何日歩いてもたどり着くことが出来なかった 体全体の感覚が鈍くなり、 いつ害虫に殺されてもおかしくないほど弱っている だんだん瞼が重くなり、 開いたり閉じたりしながら足を引きずり歩いている 目の前は白く 後ろも、横も、下も、空も白かった しんしんと降り積もる雪の中で、体を下に倒しそのまま目を閉じた ・ ・ ・ 「・・・・・・・・・・」 さっきまでの白い世界は消え、暖かい暖炉があり、 横にはガーデンテーブルが置かれていた 汚れ一つない真っ白なテーブルクロスが丁寧にかけられている 此処はどこなのだろうか そう思って体を起こそうとするが起き上がらない 横を向くと、透明なガラスでできたドアがある その横にはたくさんある本が綺麗に並べられている棚がある しばらくボッとしていると足音が聞こえる 自由に動かない体を無理に起こすと眩暈がする。 透明なドアを開ける前に気づく、自分と同じ色、灰色の髪の色 目が合うと、少年はカチャリと音を立ててドアを開けた 「おはよ、まだ安静にしてないとだめだよ!」 あせりながらも、手に持っているおぼんの上から 湯気がもくもくと出てる紅茶を少女に渡した 「貴方は?」 かすれた声に自分でも驚き、こほこほとせきをする 「僕はペンペン。君は?」 ペンペンは、後ろにあるガーデンチェアに座ると、 もっていたおぼんをテーブルの上におく 「…私は、エコ。」 すこし声が小さいが、声はなんとか元に戻る 紅茶をすこしだけ飲むと、ペンペンの方を見る 「ここはなんて島なの?」 「ここは、Snowman's Islandだよ!」 「すのぉまん・・あいらんど・・?」 はじめて聞く島の名前 ずっと砂漠をあるいていたので 雪の島の名前なんてあまり聞かない ペンペンは、薪がなくなりかけた暖炉に新しい薪をいれている 「君は?」 「私はCactuses Island」 「そんなに遠くから? 旅人?」 薪を入れ終わると、テーブルの上においてあったおぼんをもって ドアの前まで来る 「人を・・探しているの」 瞼がおもくなってきたのか そのまま閉じてすぐに寝てしまった ペンペンはそのまま横に倒れたエコに 布団をそっとかけ、おぼんを持つとキッチンへと向かった ・ ・ ・ あたまがくらくらする 瞼を開けたかとおもうと懐かしい風景 それは夢だとすぐわかる 太陽が眩しくひかり、空は青すぎて雲も1つもない。 砂漠にあるサボテン 目の前は蜃気楼… その先には いつも隣にいてくれた人が立っていた 手を伸ばしても 届かず 走っても走っても 追いつけない 叫んだって、この声は 届かない ・ ・ ・ 【 第二章(ぽよよん) 】 そこにいるのは、エコが心から 会いたいと願っている人の姿だった。 ・・・・毛・・・・ お願い・・・ そんなに早く歩かないでぇ・・・ 今にも、遠く遠く離れて行ってしまいそうな 毛の大きな背中を見つめ、 毛に追いつこうと、エコは、必死に走った。 いっこうに、追いつかないその距離に、 エコは、ほんの少しだけ、後ろを振り返った。 そこにあったのは、道すらない、広い広い灼熱の砂漠。 懸命に歩き、砂漠についたエコの足跡は、 サラサラと風に吹かれ、消し去られていた。 まるで、エコが大事にしている 毛との思い出も消し去ってしまうようだった・・・ エコの心に、なんとも言えない不安が広がった。 その不安を断ち切るように、エコは、また前を向いて、 振り向かずに歩き出そうとした時だった。 目の前で、振り返らずに歩いている毛の大きな背中が、 蜃気楼のように、ユラユラと揺らめいて、 今にも消えようとしていた。 エコは、思わず、叫びながら走り出した。 「毛ぇーーー!!!!!!!」 毛の姿を見失ったら―――― あたし・・・もぉ・・・ どこ行ったらいいのかわからないよぉー!! エコは、砂に足をとられ何度も転び、無我夢中で走ったが、 毛の姿は、まるで、まぶしい灼熱の太陽の光に 飲み込まれるかのように目の前から、消えてしまった・・・ エコは、その場に座り込み、 毛が残した足跡にそっと触れた。 その足跡も、風でサラサラと吹き消されていく。 どこに行ったの?? 毛の夢ってなんだったの?? ・・・何でも、アタシに話してよ・・・ ・・・毛・・・会いたいよ・・・ 毛への想いが、エコの心から溢れ、 エコの瞳から涙が、灼熱の砂の上にポタポタと、 こぼれ落ちては、余りの暑さに消えていった。 エコは、崩れそうになる心を抱きながら、再び歩き出した。 だって・・・ そこにいても、毛には会えないのだから・・・ 『立ち止まったら、いけない』 毛を探す旅を続けていくうちに、 いつの間にか、エコは、心の中で、 そう 自分に言い聞かせていた。 立ち止まったら、自分の心が崩れてしまいそうだから・・・ エコは、足に力を込め、灼熱の砂が広がる砂漠の大地を踏みしめた。 ・ ・ ・ エコは、ペンペンの家で、久しぶりに、 ゆっくりと、体を休め寝ていた。 暖かい布団の中で、長い長い夢を見ていた。 旅に出てから、エコは、眠れない夜が続いていた。 毛を捜す旅。 それは、途方もなく、あてのない旅だった。 そして・・・ エコの想像をはるかに越えた危険な旅だった。 数多くの危険が、エコを待ち受けていた。 砂漠に住む危険なサソリが、襲い掛かってきた事も。 今にも飲み込まれそうな広く深い海を渡り、 エコの体の数倍もある大きな大きなサメに、鋭い牙で、 噛み砕かれそうになったこともあった。 それらを乗越えるたびに、エコは少しずつ、自信と力をつけ、 きっと毛と会えると、信じてきた。 これからも、沢山の危険が待ち受けているであろう・・・ しかし、エコは、その無謀とも思える旅に、 決して足を止めなかった。 あらゆる困難な壁も、乗越えたエコだったが、 歩き疲れても、ゆっくり寝る事はなかった。 眠れない夜、エコは、あてもなく歩いた。 夜更けに、毛に会えるわけがない。 それでも、エコは、ひたすら歩き続けていた。 眠らずに、ひたすら歩き続けている理由は・・・ 体をゆっくり休める事もしなかった理由は・・・ ときどきおそってくる孤独に負けないでいるため 崩れそうになる心に負けないため エコは、朝焼けの中、ほんの少しだけ休憩をとった。 木の下で、疲れた体を横にすると、ゆっくりと目を閉じ、 独りを感じないように・・・ 『 あなたに会えたら 』と 眠りに落ちた。 エコは、優しいペンペンの暖かな家に安心したのか、 数十日ぶりに、ゆっくりと寝る事が出来た。 しかし・・・ 夢の中でさえも、歩き続けていたのだ。 毛に会いたいという一心で・・・ ・ ・ ・ エコは、夢の中で、見えなくなった毛の後ろ姿を 追うかのように、果てしなく砂漠を歩いていた。 ジリジリと、体に容赦なく照りつける太陽。 だんだんと重くなっていく足。 ひきずるようにして歩く その足をエコは、ふと止めた。 エコの視線の先には・・・ 遠くに、ぼんやりと建物が立ち並んでいたのだ。 蜃気楼かもしれない・・・ エコは、目を凝らし、その建物を見つめた。 ・・・一歩一歩・・・ エコは、止めていた足をひきずり、前へ前へと、再び歩き出した。 その場所に行けばきっと・・・ 食べ物やお水があるに違いない・・・ そして・・・毛がいるかもしれない・・・ エコは、ほんの少しの可能性にかけて歩き出していた。 信じられない事に、その建物は、蜃気楼ではなかった。 それは、砂漠の真ん中に建てられた小さな小さな街だった。 【 第三章(かすてら) 】 近づくと、その街は瓦礫が積み重なり、 大きな井戸が無残にも壊れている。 街に入り、辺りを見回していると 小さな女の子が駆け寄ってきた。 「おねえさん、どこから来たの?」 エコは屈託の無い笑顔の女の子に戸惑いつつも、 「Snowman's Island、かな?」 と、かがんで答えた。 「雪の島なんだ!いいなあ、私も見たかったなぁ」 「…?」 家の中から女の子を呼ぶ声。 「あ、私行かなくちゃ。 そうだ、 おねえさんはこれからどうするの?」 「うん…毛たんっていう人を 探しているんだけど、ここに来たのは偶然なんだ」 「そんな人はこの村には居ないよー」 「そっか…」 「ねえねえ、うちで休んでよ!」 女の子はエコをぐいとひっぱると、自分の家へ駆け出した。 家の中にはその子のお母さんが料理を作って待っていた。 簡素な内装のわりに、豪華な食材を使っているように見えた。 「あら…お客さんなんてめずらしいわ。いらっしゃい。」 お母さんはふかぶかと頭を下げた。 エコも照れくさそうにおじぎを返した。 (永月) 料理を載せたガーデンテーブル、透明なグラスには自分の顔が映る 「どうぞ、いっぱい食べてね。」 女の子のお母さんは丁寧にエコに箸やスプーンを渡した 夢なのに、感覚あるんだなぁ… 口いっぱいにひろがる美味しい味 夢なんてしょっちゅう見るのにこんなに長くて不思議な夢は初めて でも、もし夢だとしても 私は 毛を追っていきたいから… 「おねえさん、お名前は?私はね、アキっていうの!」 元気いっぱい家の中にひろがる声 ニッコリ微笑むアキ 「私は、エコ だよ」 微笑み返すエコ ドカァアアアアアアアン 響く地鳴りにエコ達はビクンと肩があがる エコは急いでガーデンチェアから立ち上がり、 ドアを勢いよく開ける 外に無数の害虫がカサカサと音をたててむかってくる 「エコおねえちゃん・・・・」 アキは怖さのあまり涙目でお母さんにしがみつく 一体何が・・・・ 空には不気味な黒い雲 「すぐ帰ってくるから、そこにいてね」 エコはアキの頭を優しく撫でると 走り、害虫へ向かっていく マントの裏から銃を取り出しパァンと弾んだ銃声が町中に響く 夢の中なのに痛みまで感じる いつ覚めてしまうかわからないほど エコはまるで花びらのように舞いながら害虫を撃ってゆく 害虫の数も少なくなってきた エコは息を切らしながら走る 「やっと倒したぁ・・」 ふぅ、とため息をつくと 「夢の中まで害虫がでてくるなんて…」 と付け加えた 帰ろうとした瞬間 音が消えた 色も消えた …殺気? 後ろを振り向く前に、エコは地面を強くけって高くジャンプした スタッと音をたてて、近くにあった瓦礫の先に着地する 「次は、待ちませんよ?」 エコの目に映るのは 血をかぶったように染まった赤い髪 瞳も真紅にひかり、鋭い剣を持つ男性 ニコリと笑うと、見えないほどのスピードで消えた 「…っ?!」 後ろ そうおもい後ろを向くがいない 違う…、上… 上から大きく振り落とされる剣にすばやくよける 剣は沈みかけた太陽の色を反射している オレンジ色にそまる木々 男は横へ剣を振るう、エコは、壁をけって宙へ舞い上がり 男の腕をめがけて撃った 「狙うなら心臓をねらったらどうです?」 弾丸は剣ではじかれる 男は戦いながらも余裕で怪しくニコリと笑う 「殺す理由がないじゃない」 息を切らしながら、ドリンク剤を飲む暇もなく 相手の武器だけを狙う 流石にエコも街で暴れまわるわけにはいかない 男を誘導するように、人のいないところまでついた ・ ・ ・ 辺りはだんだんと闇に沈んでいく 「女の子なのに体力があるんですね」 男は戦いながらも、まだ余裕で話す 「砂漠を…歩いてたので…体力は…ありますけどね…」 かれこれ7、8時間は戦ってる 一歩間違えれば確実に斬られる 「ところで、そろそろ覚めてくれません?」 「え?」 腹部に強い衝撃、油断した 足蹴りを食らって倒れるエコ 肩で息をする、立ち上がろうとするが力が入らない さっきの言葉の意味がわからない 覚める…って?夢のこと・・? 「貴方は…」 だめだ、視界がずれる… エコの目に見えるのは 空に浮かぶ大きな月と星 街は闇に溶け込み、ここからではもう見えない 「殺さなきゃ、覚めないのかな…」 赤い髪の男は、鋭い剣をエコの首筋に当てる 夢だから死にはしないだろう だけど、怖い いまここで毛を見つけられなかったら… 頭が混乱してくる 足音が聞こえる… 誰だろう… エコはぼやぼやしながら目をうっすらと開ける 目に映ったのは争いの跡ではなく 花・・・? 天国かと思った、でもここは夢 白や桃色のちいさな花びらが包むように舞っている その先には 毛が、振り向いて微笑む姿が見える エコは声を出すことも出来ずに、静かに、瞼を閉じた ・ ・ ・ 「…さん」 声が聞こえる… 誰 …? 「おね…さ…」 「………」 「おねえさん!!!」 「え・・?」 呼んだのはアキ エコは声に築き周りを見る 「心配したんだよ!」 アキの隣には心配そうにみるアキのおかあさんが居た 「大丈夫…?ひどい怪我してるじゃない…」 アキのお母さんは、エコの傷の手当てをしてくれたのか、 全然痛くない 街は相変わらず闇に溶けている 「どうして此処が…?」 エコはアキのお母さんに尋ねる 「戦っている音が聞こえる。と、街が騒ぎになって… それでエコさんが殺されそうなところを…」 アキのお母さんがエコに事情を説明する 「街の人たちが見つけて! 赤い髪のおにいさんはどこかに消えちゃった。」 続けてアキが相変わらず元気よく言った 「そう…ですか…あの、有難うございます」 この人達がいなかったら、夢から覚めてたかしていただろう エコは深々とお辞儀をした 「おねえさん!かえろ!」 アキはエコの手を引っ張り 家へと歩いた ・ ・ ・ 「すべてを…、話していただけませんか…」 エコは、アキのお母さんに聞く 「わかりました…」 すこしさびしげな表情で、アキのお母さんはそういった そして橙色に染まる月の夜、 風が窓を揺らし、カタカタと音が聞こえる エコとアキと、アキのお母さんは、ガーデンチェアに座り アキのお母さんは、この町の、この家の事情を詳しく説明した ・ ・ ・ (かすてら) この子は、初めてがいちゅう大魔王への いけにえに選ばれたんです…。 「がいちゅう大魔王…」 「この子をさし出せば街を助けてやると… でも、私は決して諦めません。この子は守り通します」 (永月) 「じゃあ、あの赤い髪の人は?」 エコがアキのお母さんに問いかける 「赤い髪の人・・?」 「しらないんですか?」 エコはてっきり、この町を支配しようとしている者か、 もしくはがいちゅう大魔王とかいうのの手下かと思っていた でも、“次は待ちません”って何のこと・・? もしがいちゅう大魔王の手下なら、話が噛みあう でも、違うとしたら一体どういう意味だろう… エコは混乱してきたのか うーん、と無意識に声が出る 「とりあえず、そのがいちゅう大魔王っていうのは どんなのなんですか?」 「大きな、がいちゅう といえばいいのかしら…」 大きな害虫・・ 「その害虫はいつこの街にくるんですか?」 エコはそういうと アキのお母さんはとてもがっかりしたような顔をした 「実は…明日の夜、なんです」 その言葉をきいて、エコは息がつまりそうになった 「ええっ?! あ、明日ですか?!」 外で吹いていた風が急にとまり、窓が揺れることもなく 月だけが静かに 輝いていた ・ ・ ・ 「流石にあんなこといわれたら、眠れないなあ…」 「どうしたらいいんだろ…」 エコは、アキのお母さんに昼のお礼 といわれて あいている部屋を借りて泊まった でも明日の夜に巨大害虫がくる なんていわれも眠れるはずがない 「それになんだろ、あの人…」 昼間見たあの赤い髪の男は一体… 窓に寄りかかり、ねむれない夜の長い時間をすごす きっと、この家にいるアキちゃんもお母さんも眠れないんだろう 今やるべきことは 守ること いま守るべきものが目の前にあるから 守りたい… 「それで、いいんだよね…」 エコはカーテンの隙間から見える大きな月に、独り言をぽつんと呟いた 「エコは…、自分が信じる道を進めばいいんだよ」 「え・・?」 どこからか毛の声が聞こえてくる 部屋を見渡してもどこにもいない それから何度よんでも 聞こえてくるのは 風に吹かれ舞う砂の音だけ さっきの花も、全部幻だったのかな…。 不安と悲しさがエコの頭を交差し、肩が震える エコの目は涙で溢れ、音も立てずに 下に零れた 「すべてが幻だとしても、走り続けたい… 貴方を、必ず見つけたい…」 流れた涙は、静かに闇の中へ消えていった ・ ・ ・ 泣きつかれ、少しは眠れたのか 気づくとカーテンの隙間からは眩い光が洩れる まだ眠いが、体を起こし ドアを開ける 「おはようございます」 エコは目をこすりながら アキとお母さんにあいさつをする アキのお母さんはやっぱり悲しそうな顔をして軽くおじぎした アキは、悲しみを隠すかのように、無理に作り笑いをし、 エコにおはよう!と元気よく挨拶した それが余計に、悲しく見えた 「外は私が見張ってます。」 「え?」 アキのお母さんが、首をかしげて言った 「今日の夜…がいちゅう大魔王がくるんですよね」 「はい…でもエコさんは関係ないのでは…」 “関係の無い人巻き込むわけにわいかない” アキのお母さんはそう思ったのだろう 「困ってる人を目の前に ほうっておけないから…かな?」 エコはニコリ、と優しく微笑むと、銃を手に持ち、 家の扉前をうろうろと見回っていた 街はやがて騒ぎはじめ、恐れ、非難する人もたくさんいた 街をすててたまるか、といって 武器を持ちアキを守ろうという住人もいた 日が沈んでいく… 街はオレンジ色に染まり、やがて闇へととけこむ 小さな池の水面は静かにきらめき、ただ、月を映す 音のない夜… 街は沈黙した…耳に聞こえるかすかな音 それはだんだんと大きくなり、街は揺れる 遠くで鳴る鐘は まるで戦いの始まりを告げるかのように 長く・・長く・・町中に鳴り響いた (かすてら) 「アキー!」 「おかあさーん!!」 「お母さん下がって!アキはお前らなんかに渡さない!」 (ゆず) 私がなんとかしなければ…(汗 こんなときになかまがいてくれたら…毛がいてくれたら… すぐにたおせるだろうに… でも今、毛はいない。 1人で戦わなければならない。 ここであきらめたら… 毛が悲しむだろう 私は関係ないからって… 死んだら毛に会えないからって… 放っておけない。 「あきらめちゃだめだ!!」 心の中の毛がそういってる。 そうだ…あきらめちゃいけない… がんばらないと… でも…そう思いながらも 無数の害虫にやられてく このままぢゃ私1人ぢゃムリだろう どうしたらいいんだろう… こんなとき…毛がいてくれたら… アキを守れるのか… エコは不安を持ちながら背水の陣で戦った。 (かすてら) 意識が遠のいていく…無数のがいちゅうに阻まれ、 アキを助ける事も、毛たんを見つけることもできずに ここで終わってしまうのか… ・ ・ ・ ・ 『『『諦めちゃだめだ!』』』 そ、その声は… 『エコ…君はここでくじけちゃいけないんだ』 け…毛たん! 『必ず、必ず戻ってくるよね?』 ペンペンたん! 『貴方はここで倒れるほど弱く無いはずだ!』 師匠のかすてら先生! 『そうだよ!私との約束、忘れたなんて言わせないから!』 幼なじみのちぇりこ! 『みんな君が大切なんだよ』 トロ! 『ねぎたべない?』 しらん! 『HEYHEY!Meはこんなやつに負けた覚えは無いぜ?』 元世界チャンピオンのボブ! 『そんだよー、こんぐらいなんどかすんね!』 食堂のおばちゃん! 『きしゃー』 いつかどこかで叩いたがいちゅう! 『ニャーニャーニャー』 人なつこいと思わせてひっかいて逃げる猫! 『若さ故の過ちという事か』 赤い彗星! 『今日のリスナープレゼントはipodナノなの〜』 やまだひさし! 『危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし』 燃える闘魂のアントニオ猪木! 『想定の範囲内です』 ホリエモン! 『ちょっと止まれないかもよ?』 トンガリキッズ! 『スライム か゛あらわれた』 ドラクエ1のスライム! 『ゴゥァァン ゴゥォォォォォォ』 イタリアが本場のフェラーリ! 『ここは、旅立ちの村です』 村の入り口に必ず立っている親切な人! 『ポイントカードはお持ちですか?』 ちょっと不慣れなイトーヨーカドーの店員さん! 『シュッシュッ』 霧ふき! 『もしもし、そろそろいいですか』 がいちゅう大魔王! (ぽよ) 目の前には、エコを今にも飲み込んでしまいそうなほどの 大きな がいちゅう大魔王が牙を剥き出しにしていた。 エコは、ハッ!と我に返り、わが身を取り巻く無数の害虫を 一気に払いのけ、害虫がいない大きな岩の上に、フワリと飛び乗った。 今・・・ここで、くじけたらダメ・・・!!! エコは、恐ろしく大きい がいちゅう大魔王を横目に、 静かに目を閉じ、気を集中させた。 エコの気配を感じ取り、害虫は、ワサワサと再び近寄って来る。 そして、がいちゅう大魔王も、恐ろしい勢いで、 エコを飲み込もうとしていた。 ・・・お願い・・・ みんな・・・私に力を貸して・・・!!! エコは、自分を取り巻く仲間を思い出していた。 そうすると・・・ 不思議な事に・・・ 自分でもビックリするほどの 体中にと自信と とてつもなく強いパワーがあふれてきた・・・ それは、何でもできるような錯覚にさせた。 エコは、精神を集中させると、 エコ目掛けて向かってくる がいちゅう大魔王に向けて銃をかまえた。 そして、目をつぶったまま、銃声を鳴り響かせた。 目を開けると・・・ がいちゅう大魔王は、あっけなく ゲジゲジと仰向けに倒れた。 狙いを目で定めななくても、驚いた事に、 その時のエコには、がいちゅう大魔王の急所がわかったのだ。 エコは、その岩場に立ち尽くし、しばらくの間、動けなくなった。 目の前の無数の害虫は、ワサワサと土の中に帰って行く・・・ ドッと体に、脱力感と共に、恐ろしさがよみがえり、 あまりの恐さに、涙が溢れ出した。 すごく・・・すごく・・恐かったよ・・・!!! エコは、旅を続ける事でとてもとても強く成長していたが、 その前に、とてもとても弱いただの女の子なのだ。 体は、ブルブルと震えだし、 すくんだ足は動けなくなるほど。 エコは、自分の体を抱きすくめるように、 広い広いこの砂漠の大地で縮こまった。 ←back   next→ メニュー
♪ゆびきり

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