『 Dear my friend 〜忘却された心 』 そこにいれば キミに会えるような気がした。 ペンペンは、真っ白な雪が積もる大木に腰掛け、 あの日のような真っ青な空と 見渡す限りの銀世界を見つめた。 ペンペンには、かけがえのない友人がいた。 この真っ白い雪に覆われた島で、ペンペンは、 自分と瓜二つのペンタと出会った。 それは、雪が、だいぶ積もった寒い寒い冬の日。 ペンペンは、チラチラと降り出した雪を、 何をするでもなく、ぼんやりと眺めていた。 楽しそうに雪にもぐって、遊ぶ ペンタは、 少し地上に顔をあげると、そんなペンペンにニッコリ微笑んだ。 よくよく見ていると、ペンタは、雪にもぐっているのではなく、 雪を掘り、かき集めて、大きな かまくらを作っていた。 「なんか秘密基地みたいだろww」 得意げに、ペンタは、ペンペンに言った。 かまくらが出来上がり、ペンペンが、中を覗くと、 中は、予想以上に広く、ひんやりと気持ち良かった。 「秘密基地だーーー!w」 「ィェ〜〜〜ィ!!!」 ペンタの屈託のない笑顔に、ペンペンは、引きつけられ、 その日、雪が降り積もる中、ペンペンとペンタは、 初対面とは思えないほど、 沢山の話をし、すぐに仲良くなった。 「もっとすごい秘密基地知ってるよwww」 そこは、ペンペンだけが知る場所だった。 ペンペンは、同じかおりを感じる ペンタだけに、そこへ案内した。 冷たく凍りついた小さな池を2mくらいもぐると、 そこには・・・ 小さな穴があり、そこを更に進むと、 大きな池につながっているようだった。 上方へ体を泳がせると・・・ そこは、真っ暗な洞窟だった。 ペンペンがロウソクをつけると、 ふっと、洞窟の中が浮かび上がった。 「ぉおおおおおwww」 ペンタは、色のついた景色に、再び驚きの声をもらした。 それは それは 見たことのない とても神秘的な 鍾乳洞がつらなる大きな大きな洞窟だった。 陽光を閉ざされながらも水深く その洞窟は輝き、 氷柱のような石がいくつも天井から伸び、 そこからいくつもの水滴が湖に落ちては、 そのポチャン・・ポチャン・・という音が、 洞窟に響き渡り、まるで水音が演奏しているかのようだった。 ペンタは、その見た事もない光景に、瞳を瞬かせた。 「すげーーー!!!」 ペンタは、ロウソクを一本もらうと、 探検隊になった気分で、胸を踊らせながら、 奥へとペタペタと進んで行った。 すると、突然、天井から、黒い鳥が、 バサバサバサバサッーーーー!!!っと、 何十匹も羽ばたいた。 「うわゎわわわわわぁぁぁああーー!!!」 何も知らない、ペンタは、頭を抱えた。 「あ〜〜〜それはね、コウモリだよw」 危ないから、奥には行かないようにと、ペンペンは言い、 頭を抱え走るペンタを見て、噴出し、あははwwと笑い出した。 ペンタも、ペンペンのところへ戻ると、 未知の世界に、心をウキウキとさせ、 ペンペンにつられて、笑い出した。 僕らの笑い声は、その洞窟に、どこまでも響き渡った。 それからというもの、 そこは、ペンペンとペンタだけの秘密基地になった。 寒さ知らずなペンギン同士の二人は、 いつもその洞窟に集まっては、毎日のように遊んだ。 ある日、ペンペンは、あるものを発見した。 「こっちwこっちw」 ペンペンは、ペンタを呼んだ。 「見てみてw」 ペンペンが、ロウソクの火をつけると、 小さなその光は、辺りをホンワリと、明るく照らし、 壁に色を映しだした。 「これ・・・w」 ペンペンが、壁に明かりを灯し、じっと見つめ、 翼で、そっと壁をなぞった。 その壁には・・・数多くの鳥の絵が刻まれていた。 誰かが残したメッセージなのだろうか・・・ ただの壁画なのだろうか・・・ 何のためにココに記されてるいるのか、 僕らには、全くわからなかった。 ただ、確かな事は、僕らが見つける以前に、 誰かがココを知っていたという事実だった。 真っ暗な洞窟の中で、僕らは、いつになく瞳をキラキラと輝かせ その壁画をいつまでも見つめていた。 洞窟を毎日さぐっていくうちに、僕らは、洞窟の土の中から、 昔、誰かが使っていたであろう道具のようなものを発見した。 洞窟は、昔、貯蔵庫として、使われていたようだった。 そして、一箇所だけだと思っていた鳥の壁画は、 壁のあちこちに描かれいた。 うっすら見えるその壁画は、 目を凝らして見ないと、絵が描かれているかわからないほど。 地下にポタポタと流れる水滴で、 すでに欠け落ち、時の流れと共に、 少しずつ、消されていっているようだった。 ふと、気づくと、ペンペンは、 その沢山の壁画の中の一つに目を奪われていた。 ペンタが近づいて見てみると、そこに描かれている絵は、 楽しそうに輪を作っている家族だった。 「なんか暖かさが感じる絵だね〜w」 ペンタが、ペンペンの後ろから話し掛けた。 しかし、ペンペンから返事が返って来なかった。 ペンペンは、目に涙をためて、壁画をただ見つめていた。 ある日。 ペンペンとペンタは、何を話すわけではなく、 暗い洞窟に腰掛けていた。 水滴が落ちる音だけが鳴り響く中、 静寂を破ったのは、ペンペンだった。 「僕ね・・・」 「家族がいたんだけど・・・はぐれちゃったんだ」 「だから、今まで、一羽でこの島に暮らしてたんだ」 ペンタは、ポツリポツリ話し出すペンペンの隣に座り、 優しく頷きながら、ペンペンの寂しい心を癒すように、 親身に言葉を返した。 「そかぁ・・・」 「いつか、きっと迎えに来てくれるさw」 ペンタは、ポンポンとペンペンの肩を叩いた。 しかし、そのペンタの言葉とは、裏腹に、 寂しさを打ち破るかのように、ペンペンは言った。 「でも・・・もう、だいぶ経つんだ・・・」 「はぐれてから、もう・・・5年は経つかな・・・」 「だから・・・」 「だから・・・もういいんだっ!」 投げやりなペンペンの言葉が、 洞窟の中を更に、ひっそりとさせた。 しばらくの間、ペンタは、何も言わずに、 その場に、ただいてくれた。 ペンペンの苦しい気持ちを十分わかっていた。 心から溢れてくる寂しい気持ちも・・ 悲しい気持ちも・・ そして、不安な気持ちも・・ なぜなら、ペンタも、同じ境遇だったから・・・ ペンタは、ペンペンを励ますかのように、明るい声で突然言った。 「ねねwwペンペンww」 「この壁画、どれも生き生きとして見えない??」 ペンタは、ペンペンからボロボロになった壁画に視線を移し、言った。 何度となく見ている壁画をペンペンは、まじまじと見つめた。 薄っすら描かれている絵は、 今にも消えてなくなってしまいそうだったが、 まるで、生きているかのように、 生き生きと描かれていたのだ。 家族の絵も、なぜ あれだけ暖かく感じたのか・・・ これだけ、ボロボロになった壁画が なぜ、そう見えるのか・・・ その時のペンペンには、全くわからなかった。 ある日、ペンタは、いつも寂しそうにして、 ぼんやりとしているペンペンをある所へ案内した。 ペンペンが、秘密の洞窟を教えてくれたから、 ペンタも、自分の隠れ家を教えようと思ったのだ。 「ここが、僕の住処(≧∇≦)」 ペンタは、少し恥かしそうに、 自分で作った木の上の家を見上げ言った。 「ぉお!!(゚ロ゚屮)屮 すげーじゃん!」 高くそびえる木の家に、ペンペンとペンタは登り、周りを見渡した。 その大木は、島の中で、一番高い木だった。 その日は、冬の晴れ間で、青く澄み渡る空に、白い山脈が遠くまで見えた。 いつも暗い洞窟の中にいたペンペンは、 目をパチパチとさせて、その光景に見入った。 「なんて、素晴らしい景色なんだろう・・・w」 ペンペンが、いつになく、ため息をつきながら、言った。 「こんなキレイな景色・・見たことないよ・・・」 「この景色も、あの壁画に残したいね・・・w」 ペンペンの口から出た 思いがけない言葉だった。 何でも投げやりになっていたペンペンから出る言葉とは思えず、 ペンタは、ペンペンの横顔を見つめた。 雪が太陽の光でとけ、虹が薄っすら、真っ青な空に浮かんでいた。 ペンペンは、その夜、さっそく暗い洞窟に、 ロウソクを何本も立て、絵を描き始めた。 あの素晴らしい景色を忘れないようにと・・・ 目を閉じては、目に焼き付けたあの景色を思い浮かべた。 ペンペンは、何日も何日もかけて、絵を描いた。 ペンタは、描いているペンペン真剣な横顔を見て、 嬉しい気持ちでいっぱいだった。 ペンペンは、忘れてしまった何かを取り戻していくようだった。 数十日後。 ついに、ペンペンの壁画が完成した。 青く澄み渡った空。 暖かく降りそそぐ太陽の光。 真っ白に覆われた大地。 色鮮やかな虹。 そして、そこにたたずむ二羽の鳥が描かれていた。 「こ・・・これ・・・w」 「僕たち?!?!」 「ぅぉーーー!!壁画の鳥達の仲間入りだーwww」 嬉しさのあまり、ペンタは、大声をあげた。 ペンペンは、描いていた筆をおろすと、 描き終えた壁画を見つめ、ゆっくり頷いた。 「そうww仲間入りだ・・w」 描いたこの絵は、 この壁に、ずっと・・・ずっと残っていくだろう・・・ きっと、自分がいなくなっても・・・ずっと・・・ ペンペンは、この絵を描いていくうちに、この洞窟の壁画が、 なぜ、描かれているのか・・・ なぜ、これほど、生き生きして見えるのか・・・ はっきりと、わかった。 それは・・・ 鳥たちが生きた証だった と。 そこに確かに、自分達は生きていたと。 チカラ強くその洞窟の壁に刻み込んだに違いなかった。 その壁画の一つ一つに、生命の尊さを感じ鳥肌がたった。 今まで、ボロボロに崩れた ただの鳥の絵だと思っていた壁画が、 とても素晴らしい作品に思えた。 一羽一羽それぞれ たくましく生き抜いていったに違いない。 その自分の生き方に・・・ 自分自身に・・・ 誇りを持っていたに違いない。 そして、それを、この壁に残そうと・・・ 自信に満ち溢れ、堂々としたその姿が描かれている壁画に、 ペンペンは、そっと、触れた。 自分もこんな風に、誇りを持てる生き方がしたい・・・ そして、胸を張った自分の姿を、刻み込み、 自分が居なくなった後も、何百年と続くこの地に、 自分が生きていたという証を残したい・・・ ペンペンは、たくさんの願いを込め、完成された絵の中に、 ペンタと自分自身を最後に描いたのだった。 僕らは、その夜、完成されたお祝いをした。 ペンペンとペンタは、洞窟の中に、 壁画に描かれた絵の鳥達を敬うように、 沢山のロウソクを灯した。 そして、ペンペンの描いた壁画の前に座り、 絵が完成したことに・・・ 洞窟を見つけだし、この壁画に出会えたことに・・・ ペンタを出会えたことに・・・ そして・・・ ここにいる自分自身に・・・ 沢山の気持ちを込めて、グラスを傾け、乾杯した。 ペンペンは、もう、ペンタと出会った時のペンペンではなかった。 今を頑張って、生きようとしていた。 「ペンペンwヽ(〃'▽'〃)ノ☆゜'・:*☆オメデトォ♪」 ペンタの明るい声が、洞窟に響き渡った。 それから、僕らは、たくさんの話しをした。 夢なんて、抱いたこともなかったペンペンは、 目を輝かせて、これからやりたい夢やこれからの事、 沢山の事をペンタに語った。 先は、この洞窟のように真っ暗だけど、 今のペンペンには、手探りで探していく力を持っていた。 僕らの楽しい話し声と笑い声は、途絶えることなく、 洞窟に響き渡っていた。 振り返ってみれば、僕らは、いつも一緒にいて、 同じ行き先に向かって進んでいた。 ペンペンは、何をするにも、どことなく投げやりで、 周りに目を止めることなく、急ぎ足だった。 それとは、全く逆のペンタは、 ペンペンの後を、マイペースにゆっくり歩いた。 しかし、ペンペンは、ペンタの姿が 見えなくなると、その足を止めた。 その足が、どっちに行けばいいのか わからず・・・ 不安な気持ちで立ち止まってると、 知らない間に、ペンタがペンペンの所まで、 追い着き、『こっちだよw』と、 優しくペンペンを導いてくれた。 そんな僕らは、いつも、いつも、一緒だった。 ペンペンもペンタもお互いに、一緒にいることで、 とても、安心感を覚えていた。 ペンペンにとって、ペンタは・・・ いなくてはならない存在になっていた。 ・・・心から信頼できる大事な友達になっていた・・・ 朝焼けを見ようと、ペンペンが言い出し、 洞窟から脱け出そうとした時だった。 「ペンペン・・・あのね・・・」 背後から、いつもと違って少し残念そうなペンタの声がした。 いつもだったら、はしゃいで、飛び出していくのに・・・ 「(・ω・)ん??どうしたの??」 ペンペンが、心配そうに覗き込んだ。 「僕・・・もう、いなくなっちゃうみたい・・・」 「ハニャフニャ? (’▽‘;)」 ペンペンは、ペンタが何を言っているのか意味がわからなかった。 「ペンペンwあのね・・・信じられないと思うけど・・」 「僕は、ペンペンの心にずっといたんだよ」 「でも、ある日、この姿になったんだ」 「ペンペンが、自分から自分の外へ追い出した分身」 「それが・・・・僕なんだ」 「でも、やっと・・・僕を必要としてくれるって」 「ペンペンが望んでくれたから・・・w」 「また・・ペンペンの中で生きられるみたいw」 「ほら・・・ペンペンの心の中に、温かい気持ち あるでしょw」 ――― それが僕だよ ――― ペンペンは、ペンタの言葉を聞き、驚きを隠せなかった。 ペンペンは、心に温かい気持ちが膨らんでいくのがわかり、 自分の胸を見て、そっと手をおいた。 そう・・・ ペンタは、昔からペンペンの心の中にいて、 分身した姿になっても なお、 ずっと見守ってくれていたのだ。 ペンタは、いつの日からか、自分で知らず知らずのうちに、 追い払い、忘れ去っていた自分自身だった。 何もかも、投げやりになって、本当の自分の心を 見失ってしまい、追い払われてしまった心が、 分身となって、ペンタが現われたのだろう。 ペンペンには、何をするにも無駄だと思っていた。 何かを信じたり、やり遂げようとする努力でさえも、 どこかで、みくびっていた。 そんなことをして何になると・・・ ペンペンは、ペンタのおかげで、 昔、抱いていた豊かな心を呼び戻した。 ペンタ・・・ ありがとぉ・・・ 「ペンペン・・・僕の体は消えちゃうけど・・・」 「これからもずっと一緒だからねw」 そう言うと、ペンタは、ペンペンの手の中に、 小さな雪だるまのヌイグルミをそっと手渡した。 それは、ペンペンが小さい頃から大事にしていたヌイグルミで、 気がついた時には、なくなっていたものだった。 ペンペンは、とても大事に、 そのスノーマンのヌイグルミを抱きかかえると、 瞳から、温かい涙があふれ、頬を何度もつたった。 それは、数年ぶりに流した とても温かい涙だった。 ペンタは、沢山のことを気づかせてくれた。 涙でゆがんだ視界の中、 いつしか、ペンタの姿はなくなっていた。 たった一つしかない この命を大切にしていこう・・・と。 ペンペンは、ペンタの魂と一つになり、 温かな心を抱いた自分自身をぎゅっと抱きしめた。 一人きりだと思っていたけど、周りを見れば、 沢山の温かな鳥達がいるじゃないか・・・w 温かな気持ちが、ペンペンの心からあふれ出ていた。 今。を懸命に生きよう。 それが道になる それが未来。になる 優しいペンタの声が、心に響いていた。 それから数年後、大きな地震があり、 ペンタと行った あの洞窟の入り口が閉ざされてしまった。 もう、行く事ができなかったが、 あの洞窟に描かれていた鳥達のように力強く生き生きと ペンペンは生きていた。 ペンタと見た あの日の輝いた景色が、今なお、描かれている。 何十年後、何百年後もそこにある。 それだけで、ペンペンは十分だった。 ペンペンは、ペンタが住処にしていた大木へと足を運んだ。 そこにいれば キミに会えるような気がした。 僕は、真っ白な雪が積もる大木に腰掛け、 心の中に居るペンタに ――― 会っていた ――― ― END ―    メニュー
♪君のいた季節

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