その先には、大きな部屋があった。 そして・・・ 大きなドッシリとした箱がポンと置いてあった。 「あった!!!」 ぴよた達は、いっせいにその箱まで走り出した。 どんな宝物なのか・・・w 僕達は、高鳴る胸に、翼を押し当てて、 その箱の前に、少しの間立ち尽くした。 「よし!!開けてみようか!!w」 ぴよたが、開けようとしたその時、 海水が、すでにこの部屋に入ってきている事に気づいた。 この暗い洞窟の中で、時間の流れがわからなくなっていたが、 すでに夕方になり、潮が満ちてきているようだった。 「うゎ〜〜なんてこったぁ〜」 ぴよた達は、宝箱を陸上に運ぼうとしたが、 その箱はずっしり重い・・・ 三人でも運んで、やっと持ち上げられる重さ・・・ 仕方がない!!! ぴよたは、その場で、重たいその箱の蓋を開けた。 そこには―――。 数多くの宝石がギッシリ散りばめられていた。 「うぉおwwキレー!!」 すずみは、キラキラと目を輝かせた。 しかし、そんな事をしている間に、 海水はとめどなく流れ込み、胸まで沈んでいた。 「うぁ、こんな沢山持てない!!」 ぴよたとぺんぞうは、一つかみ持ち逃げようとしたが、 すずみが、いつになっても、逃げようとしない。 キラキラと輝く宝石に目を奪われて、 すっかり周りを見失っているようだった。 「すずみぃーーー!!行くぞぉーーー!!」 「何やってるんだー!時間がないんだぞーー!」 ぴよたは叫んで、必死にすずみの元まで水をかいて移動した。 「でも・・・まだ、全部持ちきれないのぉ〜」 あたふたと、すずみは、手にイーーパイの宝石を抱えていた。 「何言ってるんだよ!」 「早くしないと、海にのまれるぞ!!」 ぴよたは、必死にすずみを連れて行こうとした瞬間。 ザザザザザ―――――!!! 一気に、海水が、部屋に流れ込んできた。 宝箱も、沈み見えなくなっていく。 「ぁぁぁあああああああ!!」 すずみは、消えていく宝石に釘付けだった。 そして、たくさん宝石を持ちすぎていたせいで、 濁流と共にスッカリ流れてしまった。 すずみは、沈んでいく宝石をかき集めようと翼を伸ばしていた。 「そんなことは、いいんだよ!!」 「こんな宝石なんかよりっ!!!」 ぴよたは、手にしていた宝石を自ら、手放すと、 すずみの手をシッカリ握って泳ぎ出した。 ぴよたにとって、宝石よりも、ずっとずっと、 すずみの方がはるかに大切だった。 すずみは、残念そうに後ろを振り向き、 ただ引きずられるまま泳いだ。 ぴよたは、目の前に襲い掛かる濁流にも負けず、泳ぎ続けた。 濁流は、徐々に強さを増していった。 ぴよたは、すずみが流れに飲み込まれないように、自分が盾になって、 強く強くすずみの手を握り、引っ張って行った。 押し流されてしまう海水の勢いに恐ろしさを感じ、 すずみは、やっと我に返った。 そして、外への出口が見えてきた。 ぺんぞうが、早く早くと、手を振り、 持ってきたパラソルにつかまるようにと手を差し伸べた。 ぴよたは、ぺんぞうのパラソルにつかまり、外へ出た瞬間、 海は怒涛のごとくその島を消していった。 危機一髪で、ぴよたとすずみは、助かった。 高い波に揺られながら、ぴよたとすずみは、 生きている事に胸をなでおろし、感謝した。 日は沈み、当たりはスッカリ暗くなっていた。 ただ、昨日と変わらない月明かりと星たちがそっと 僕らがいる海を照らしてくれていた。 ぴよた達は、海岸に腰を降ろし、 あまりにも無茶だった冒険に ただただ呆然としていた。 そして、一時の夢であったかのように、 さっきあった出来事を思い出していた。 ぺんぞうも、あの荒波をかき分けて進むのに、 懸命で、手にした一握りの宝石でさえ 持ち帰る事ができなかったと言う。 ぴよたは、すずみの事が好きなんだと、初めて思い知った。 そして、助かって本当に良かったと、優しくすずみを抱きしめた。 ぺんぞうも、命の尊さを知り、ぴよたとすずみが 助かって良かったと涙し、ぴよたとすずみの上から抱きしめた。 あんな危険な事までして、宝石を取りにいくなんて もう、そんな浅はかな事はもうしないだろう・・・ 僕たちは、お互いに顔を見合わせると笑みをもらした。 海の底に宝石は沈んでしまったけれど、 僕たちは、この冒険に満足していた。 なぜなら・・・ 僕たちは、宝石よりも、 もっと もっと 光り輝く大事なものを見つけたのだから・・・ ― END ― ←back   メニュー
♪僕らの世界

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