「ココからが、本番だよ!!!」 そう、ゆずが、大声で言った瞬間。 グラグラと、大きなツリーがしなった。 バランスを崩しそうになり、マーは、空へ舞い上がった。 しかし、ゆずは、マーとは逆に、 小柄な体でツリーの下へと突進して行った。 無謀とも思えるその行動に、マーは、心配になり、後を追った。 ゆずは、倒しなれてるかのように、 スルリスルリと、ワープする害虫の間を 通り抜け、ツリーの真下に行った。 瞬発力は、あの時のゆず以上のものだった。 マーでも、2、3回害虫にかまれながら、 やっと、ゆずに追いついた。 ユッサユッサと揺れているクリスマスツリーの真下に、 ほんの少し空洞が見えていた。 その隙間に、スルリと、ゆずは、入っていった。 信じられない事に、害虫の巣の中に、自ら入って行ったのだ。 ここまでは、さすがに、戦った事がなかったマーは、 少し恐ろしさを感じ、身を凍らせた。 しかし、あんな力があるとは言え、 小さなゆずをそのまま一人で行かせる訳にはいかない。 マーは、勇気を振り絞り、ほんの少し洞穴が開いた瞬間、 同じようにスルリと中へ入って行った。 うぉ・・・ なんだ・・・ 真っ暗でよく見えない・・・ それでも、害虫がガジガジと攻撃してくる。 マーは、目をつぶると、ほんの少しの空気の揺れで、 そこに害虫がいるのか判断し、攻撃しては、すり抜けて行った。 「ゆず―――!!!大丈夫なのか――?!」 マーの大きな声が、大きな洞穴の中で響き渡った。 「おーーーい!!」 「大丈夫だってばさーーーw」 必死にゆずを呼ぶマーとは裏腹に、 ゆずの能天気な返事が返ってきた。 マーは、安堵の息をついたが、 自分の身を守ることで、精一杯だった。 どこまで、行く気なんだよ!! マーは、堪忍したように、四方八方から 噛み付いてくる害虫を振り払った。 もう、奥に行けば行くほど、害虫の多さに、 マーは、術を使いたかったが、 術を使えば、この洞穴ごと吹き飛び、ゆず や自分までもが、 埋まってしまいかねない。 その条件は、ゆずも同じはず・・・ ゆずの強さが、どれほどのものなのか・・・ マーは、恐ろしいまでに思い知った。 そのゆずの計り知れない力は、もしかしたら・・ 俺の力を遥かに超しているのかもしれない・・・ と、マーは、身震いした。 やっと、ゆずの隣まで追いつくと、目の前には、 普通の害虫の50倍もの大きさの害虫が息を潜めていた。 見た事もないほどの・・・害虫の大きさに、マーは面食らった。 「うぉ・・・」 思わず、マーは、後ずさった。 「行くよ!!w」 そう言うと、ゆずは、その小さな体で、 大きくその害虫の上空を飛び越え、 害虫の背後にまわった。 その舞った姿が・・・まるで ゆず そっくりだった。 あのバカヂカラを持つ ゆずの大きな翼を見たような気がして、 マーは、目をこすった。 全てが幻なのかもしれない・・・ 全てが夢なのかもしれない・・・ マーは、そう思った。 ゆずが、こっちを向いてウィンクした。 「ぇ・・・」 まさかと、思った。 ここで、術を・・・ する気なのか・・・?! 間違いなく、この洞窟が壊れるぞ?! しかも、こっちに向けて、術をしたら・・・ 俺も術を発しないと・・・ 俺が吹っ飛ぶじゃないかYO―――?! もう・・・イチカバチカだ!!! ゆずが、その翼を、振り上げた瞬間。 マーも同じく、翼を大きく振り上げた。 ドガガガガガガァァアアアン!!!!! 破壊力のある凄まじいチカラ同士がぶつかり合い。 耳鳴りがするほどの地響きと 立っていられないほどの地震が襲い掛かった。 信じられない事に・・・ ゆずの術とマーの術は、互角だった。 チカラ同士がぶつかり合い、洞穴自体の壁に、 術が振りかからなかった事が幸いして、 すぐには、崩れ落ちないが、 グラグラと揺れた地震で、 もろくも、その洞穴が少しずつ崩れ出した。 ゆずが、「やったね!!w」と、マーの近くに寄ってきた。 砂ぼこりの中、目を凝らすと・・・ 大きい害虫は、無残にもバラバラになっていた・・・ 「ぐは・・・見たくないもの見ちゃったな・・・」 マーは、顔を引きつらせつつ、 ゆずの手を取ると、急いで、 害虫をかきわけ外への出口へ駆け上がって行った。 危機一髪で、マーとゆずは、外に出る事ができた。 そして・・・ 離れ島へ舞い降りると、 マーは、大きく深呼吸した。 こんなに、ドキマギしたのは、久しぶりだった。 「ゆずと一緒にいると、心臓がいくつあっても足りないなw」 そう言うと、マーは、なんだか、 おかしくなって、笑いがこみ上げた。 あんな恐ろしい思いをしたのに、 なぜ、ゆずといると、こんなに楽しいんだろう。 ゆずも、そんなマーを見て、無邪気に、 ヽヽ(≧▽≦)//あはは!!wと笑い出した。 目の前のクリスマスツリーは、一層光りを増すと、 キラキラと色とりどりの光を放ち、徐々に崩れ散っていった。 それは、舞う粉雪にまじって、七色に光り、降り注いだ。 今までに見た事もないほどの美しい幻想的な風景だった。 「・・・メリークリスマスw」 ゆずが、マーを見上げて、照れくさそうに言った。 その言葉に、マーは、はっとした。 そう・・・ 今日は、クリスマス・イヴだったのだ。 皆に平等に来る聖なる夜。 クリスマス。 クリスマス・イヴの夜にだけ現われる害虫島の 幻のクリスマスツリー。 害虫もきっと、クリスマスを祝いたかったのだろう・・・ そう思うと、少し気が引けたが、 マーは、ゆずに、優しい笑顔を向けた。 ・・・メリークリスマス・・・ゆず・・w 七色に輝く雪を身にまとい、 マーとゆずは、いつまでも、その美しい光景を見ていた。 ゆずは、マーの噂を耳にしていて、 前からマーの事を知っていたと言う。 そして、一目見て、マーの術に魅了された ゆずは、 ずっとマーに付いていきたいと思っていた。 「アタシも、マー兄ぃのように鳥達を助けたいなw  ねぇ・・・wアタシもマー兄ぃについて行ってもいいかなw」 モジモジしながら、照れくさそうに、ゆずはマーを見上げた。 そう言う瞳は、やっぱり普通の女の子の目だった。 「うんwwいいよw」 マーは、ゆずにとても優しく頷いた。 マーも、そう望んでいた。 一緒に旅をして、果てしなくのびるであろう ゆずのチカラをライバルに、 再び自分も更に、強くなろうと・・・ 一緒に成長していきたいと・・・望んでいた。 そして、ゆずは、マーと旅を続けることで、沢山の鳥達を助け、 この大きな力の素晴らしさを知る事になるだろう。 年齢は、だいぶ離れてしまったけど・・・ きっと、ゆずは、生まれ変わってきたのだろう・・・ いきがっていた ゆずが、あんな最期で 終りにするはずがないよな・・・ マーは、ふっと笑い、優しい眼差しで、ゆずを見つめた。 すると・・・ ゆずの翼の中で、何かが、キラリ・・・と光った。 マーが、その翼の中に視線を向けると、 いいでしょwwwと言わんばかりに、 ゆずが、その光るものをマーの目の前に持ってきた。 それは・・・ 世界に二つとない、 あの日に、マーが海に落とした・・・ クリスタル ストーンだった。 「それは・・・」 マーが、言い出しそうになったが、 そっと、その言葉をそっと心に閉まった。 そして、マーは、大きく空を仰ぎ、にっこりと微笑み、 心の中で、つぶやいた。 最後に手にしたのは、おまえだな・・・ ゆず・・・おまえの勝ちだな・・・w とてもとても晴れたマーの表情は、月明かりに照らされ、 クリスタルストーンのように光り輝いていた。 ― END ― ←back   メニュー
♪Sky Beholder

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