六郎が出所した日だから、二羽で美味しいものでも食べて、
お祝いでもしようかと思ったが、
そんな暇は案の定、全くなかった。


探偵事務所を六郎に案内すると、
ぽるると六郎は、早速、ハーウェルの依頼された
事件を捜索をする事にした。


まずは、事件現場へと3羽は向かった。


数日後ついた その島は、まっしろな雪に覆われていた。


静かにチラチラと降る雪が、
事件をさらに未解決にしていくようだった。


犯人の手がかりさえも、雪が埋めていく。



「ここの島で・・」
「孫が・・・さらわれたんです・・!」


ハーウェルは、その時の状況を思い出し、
恐ろしさと怒りで、ギュっと握った拳が小刻みに震えていた。


「複数の鳥達が突然、舞い降りてきて・・・!!」

「わしのカワイイ孫を連れ去って行ったんだ!!」






「・・しかし・・・こんな冷たい雪がシンシンと降っていて」
「鳥さえも、近寄らない この島にナゼ来たのです・・・?」

ぽるるは、周りを見渡しながら、ハーウェルに質問した。



「この島を通りすぎて、こっちへ、まっすぐ行くと」
「賑やかな町がある島があるのです」
ハーウェルは、南の方角を見つめた。
「家から、大回りせずに、この島を通り過ぎた方が近道なのです」



犯行現場まで、案内してもらおうと、
3羽は、島に踏み入れようとした その時だった。




大きな木の枝が雪の重みで、ユサユサと揺れ、
その雪が地面にドサっと落ち・・・









どかぁぁぁぁぁぁあああああああああん!








凄まじい爆風が吹き荒れた。





3羽は吹き飛び、海面に叩きつけられた。




「この島は・・・一見、雪に覆われてるだけのように見えるが・・」
「覆われた雪の下に、たくさんの爆弾が埋まってる・・・」
「見ろ・・雪の隙間から黒い物が見えてるだろ・・」

「・・・地雷だ・・・」

「少しの重みでも、反応して、爆発する」

どんな状況でも、冷静さを失わない六郎は、
海でパタパタと泳ぎ、ハーウェルを背中に乗せ、
助けると、静かに言った。




「な・・・何の為に・・・!」

爆風で乱れた羽をバサバサとさせ、
ぽるるは、危機一髪の状況に、息をきらせながら言った。




ぽるると六郎は、しばらく、
爆発で白く舞い上がったモクモクとした煙をにらみつけた。




これでは、捜査すらもできない。




ハーウェルは、海の流木に座ると、
ぐったりとうつむき、
ワナワナと震えだした。



そのハーウェルの様子を見て、
ぽるるは、言った。


「ハーウェルさん・・・大丈夫ですか・・・」

「無理もありません・・突然の爆撃で・・・」

「私たちも、この事件を少し甘く見すぎてしまいました・・」

「どうか、安全なこの場所に居ててください」




「私たちは、もう少し、この島の周りで調査を進めます」





「・・・ぁ・・・はい・・・」

ハーウェルは、ぽるるを少しだけチラリと見て返事をすると
再び、うつむき、ユラユラと揺れる波をじっと見つめた。








何かを考えているようだった・・・。







ぽるるは、大空に飛び立ち、
ハーウェルが座っている辺りを少しだけ振り返った。






ぽるるには、わかっていた。




ハーウェルが何かを隠していることを・・・。









島での捜査をした後、この事件に関わるのはあまりに危険だと、
ぽるると六郎は判断し、打ち切りとなった。



警察に知らせ、ここの場所を厳重注意・危険区域とし、
爆弾処理班が要請された。




刑事の捜査も最近入っていたと言うのに・・・
いつ、その爆弾がしかけられたのか・・




現場には、レオの姿もあった。




レオは、刑事時代ぽるるの優秀な後輩で、
とても信頼を寄せている一羽だった。







警察の中でも、総司令官という肩書きを持ち、
爆弾事件を請け負う特殊部隊の隊長を任され、
狙撃でも優秀な成績を残し続けていた。




現在も爆弾事件を解決する為、情報収集の日々に追われ、
ペンギンである その翼は決して空を飛べなかったが、
六郎のように、どんな場所にでも足を伸ばし、走り回った。




警察に引き渡した事件だが、ぽるるは、
ずっとハーウェルの様子が気になり、
爆弾とハーウェルが何かしら関連があるか調べた方がいいと、
現役刑事 レオに連絡をした。






レオは、部隊の指揮をとり、一通り現場の調査をすると、
小さなノートパソコンを開いた。


手馴れた様子で、警察の内部機密情報データに追加し、
パタンと閉め、立ち去ろうとした時、
レオは、ぽるるに紙っぺらを手渡し、
読んだら廃棄するように耳打ちした。



警察の機密情報は、決して外部には漏らしては
いけない事だったが、
ぽるるが爆弾事件にかかわってしまった事で
疑問を残しているのならと、
レオは、信頼している ぽるる達を安心させる為、
情報を渡したのだった。




その紙には、意外な事実が書かれてあった。




* * * * * * * *

爆弾の発明家。

クォール。

ハーウェルの長男として、誕生。

妻子を残したまま、1996年 行方不明。

* * * * * * * *



そのクォールこそ・・・


ハーウェルの息子だったのだ。


そして、連れ去られた孫は・・
クォールの実の娘。

クレハ。


そう書かれている横には、
クォールの顔写真が載っていた。


ぽるると六郎は、紙に記載されている情報と
クォールの容姿を目に焼きつけ、丹念にその紙を破った。



静寂な重々しい空気の中、
紙ふぶきは、風に乗り、チラチラと舞った。




娘恋しさに、連れ去ったのならば、
今も生きているに違いない!!




そう、レオも感づき、
連れ去られた後、すぐに、
数百匹の捜査員の要請を出し、
探し回ったが、結局、見つけ出せずに終わったと言う。




「なぜ、逃げ出す事ができたのに」
「爆弾を埋める必要があったのか・・」
ぽるるは、頭をフル回転して考え込んだ。


「あの爆弾の上に積もった雪を見ると・・・」
「奴らは、そう遠くには行っていないはずだな」
六郎は、目を細め、遠くの爆弾を見つめながら、言った。



まだ、危険な事件に立ち入ろうとしているぽるるや六郎を
これ以上、危険な事に巻き込んではいけないと、
真剣な面持ちで、レオは言った。


「ぽるる先輩、六郎先輩!」
「私たち 警察が、必ずやクレハさんを助け出します」

「これ以上、ぽるる先輩や六郎先輩が」
「手を出すのは危険すぎます」


「警察の我々に任せてください!」



疑問点があるものの、警察に事件を引渡し、
ぽるると六郎は、レオに『よろしく頼む』と、
挨拶をすると、空に羽ばたいた。



数時間、多数の部隊を率いて、
レオは、手分けして探し回ったが、
組織の仲間らしき鳥を発見する事ができなかった。







ハーウェルは、流木に座ったまま、
雪に覆われた島をずっとボンヤリと見ていた。



きっと、息子 クォールの面影を追っているに違いない。




ハーウェルは、ぽるるたちが来たのにも
気づいていない様子だった。

「ハーウェルさん・・・」
「今回の事件は、とっても危険な誘拐事件と」
「私達は判断し、警察へ連絡を取りました」


ぽるるは、行き交う爆弾処理班の鳥達を指差した。


「しばらく、この場所は、警察の調査が入るでしょう」


「お孫さんのクレハちゃんは・・・」
「これは推定ですが・・・組織内で生きているはずです」



ぽるるは、じっとハーウェルの表情を伺いながら、言いきった。


「だって、クレハちゃんの父親・・」
「あなたの息子でもある・・クォールさんが」
「その組織にいるのですから」




「娘を殺すなんて事は許さないでしょう」




ハーウェルは、より一層険しい表情をすると、
うなだれる様に、頭を深々とさげた。



「だまっていて・・すまない」と、
ハーウェルは、トーンの低い声を出した。



ハーウェルは、息子クォールが、爆弾組織に
関わっている事を知っていたのだ。




「しかし、信じて欲しい・・・」
「クォールは、凶悪犯なんかじゃないんだ」
「組織に使われているだけ・・・」

「幼い頃から、クォールは、心が優しい子だった・・・」
「しかし、爆弾に興味があり・・」
「私は、それを止めなかった・・・」
「まさか・・・爆弾を作れるまでに・・なるとは・・」
「私も思ってなくて・・私が浅はかだった・・・!」



「大人になったクォールは、鳥さえも殺してしまうほどの・・」
「殺人的な威力の爆弾を作れるまでに、」
「爆弾の知識を取り入れてしまった」



「私が・・・早いうちから、止めていれば・・・!」

ハーウェルは、握り締めた拳を流木に叩きつけた。



「爆弾組織が、クォールの知識を利用しようと・・」
「クォールを誘拐したんだっ!」


「凶悪犯なんかじゃない!」


「クォールは・・・被害者なんだっ!」


ハーウェルは、ぽるると六郎に近づくと、
土下座し、懇願した。



「私達を・・・助けてください・・・」


「実は・・・家内は、心配するあまり・・」
「やせ細り・・病気にかって・・死んでしまい・・」


「クォールのお嫁さんは・・愛想をつかされ・・」
「クレハを残し・・蒸発してしまったんだ・・・」



「結局、クレハと二羽で細々と暮らすようになり・・」


「やっと・・・クレハも私との生活に慣れてきた・・」
「そんな矢先だった」




「クレハまで・・・!連れ去るなんてー!」



「奴らに・・・私は家族をめちゃくちゃにされたんだっ!」




ハーウェルは、あまりの悔しい想いに、
ワナワナと体を震わせながら、涙をこぼした。



夕刻。



徐々に、波が高くなっていた。


流木が大きく揺れ、波打つたびに海水が流木かかる。



「警察に、この話をしても・・・」
「凶悪犯だと、クォールを逮捕するでしょう」



「彼らは手柄しか・・・考えないのだから・・」



ハーウェルは、とても悔しそうな表情を浮かべ、



「警察なんて・・・」と、独り言のようにつぶいた。






「お願いですっ!」

「私達を・・・助けてくださいっ!」

「ぽるるさんと六郎さんだけが頼りなんです・・!」

「どうか・・・!お願いします!」


ハーウェルは、そう、力強く言うと、
再び、深々と頭をさげた。






「事情はよく、わかりました・・」


「ハーウェルさん、頭をあげてください・・」


ぽるるは、静かにハーウェルをまっすぐ見つめると、
ニッコリ微笑んで、穏やかに言った。


「さきほど警察に引き渡してしまいましたけど・・」




「私たちがなんとか捜査できるように」
「警察にお願いしてみます」



「クォールさんとクレハさんを必ず・・」
「無事に助けます・・・w」


その言葉を聞くと、ハーウェルは、安心したように、
ほんの少し微笑むと、ぽるると六郎の手を握り、
「ありがとぉ!!」と、心から感謝の意を伝えた。




「何かありましたら、すぐに!」
「駆けつけますから!」
そう、言うと、ハーウェルは、
誰も待っていない、一人きりの家に帰って行った。


ぽるると六郎は、姿が見えなくなるまで、
老いたハーウェルの後姿を見送った。




この日、しっくりこないまま、日が暮れていった。



「警察なんて、手柄だけねぇ〜・・・」


ぽるるは、最後に言いかけたハーウェルの言葉が、
ひっかかっていた。


「警察は当てになんないってか?!」
冗談めかしたように、六郎が言う。



「警察なんて・・・ねぇ〜・・・」


そう、つぶやきながら、ぽるるは、
その言葉の裏に何かを隠しているような
ハーウェルの張り詰めた表情を思い出していた。




きっと、警察を頼れなくなる・・・




何かがあったに違いない・・・  と。








ぽるると六郎は、次の日、レオを訪ねた。


「クォールがいる爆弾組織の事件」

「俺たちにも、手伝わせてくれないか?」


「決して、警察の邪魔にはならないから・・」



ぽるるは、真剣な表情で、レオに伝えると、
「危険なことは承知の上だ」と、頭をさげた。



そう・・・この事件はあまりにも、
探偵事務所のような小さい所が
解決できるものではなかった。




レオは、ぽるるの真剣な表情に、顔を曇らせた。



「我ら警察のように情報を網羅していても」
「逮捕が困難な組織なんだ・・・」


「今も、組織が膨れ上がりつつある・・・」


「大規模な組織だ・・」


「それに他の凶悪組織とつながりがあるかもれない」



「あまりにも危険すぎる・・」



「下手に出て行くと、ケガするぞ・・」


「いや・・ケガどころじゃない・・」


「下手をすると、死すら招きかねない」




「ぽるる先輩でも・・・」


「こればかりは認める事ができませんよ・・」



「その依頼のむことはできません・・・」


「申し訳ない・・・致しかねます・・・」


レオは、ぽるるや六郎を危険にさらすことは、
どうしてもできなかった。


「それを承知で、お願いに来たんだ・・」

それでも、ぽるるは諦めなかった。


いや、諦めることができなかった。



なぜなら・・・
ぽるるは、いつだって、
依頼者の気持ちを第一にしていた。



ハーウェルの気持ちを大事にしてあげたかった。



一回引き受けた事件を・・・
ハーウェルの気持ちを・・・
無視する事などできない。



だから、ぽるるは、危険なこの事件に
決して、背を向ける訳にはいかなかったのだ。




すると、重い雰囲気を壊すように、六郎が言い出した。

「うちと手を組まないか?」と。


「協力ってことならいいだろ?」


「警察のお手伝いってことでさw」


「むこうが凶悪組織と手を組んでいるんだったら」

「こっちだって、警察の枠だけじゃなく」

「俺らを使ってほしい・・・w」


「一人でも多い方がいい」


「俺らだって、今まで、沢山の事件を解決してきた」

「素人じゃない」


「何か力になれるかもしれない」


「そうだろ?」


「警察としてもプラスになる訳だw」


「こんな好都合な話はないだろw」


「もちろん報酬なんていらない」


「こっちからの依頼だからな」


六郎は、レオに近づくと、肩に手をまわし、
覗き込むようにレオをジッと見つめた。


レオは、断固として断ったその表情から、
迷ったような顔に変わっていた。



「よし、決まりだなw」

六郎は、そのレオの表情を見て、
半ば強引に決めた。


「協力して、事件を解決させよう!」




ぽるるは、そんな六郎を見つめ、少し微笑み、
『ありがとう』と、声をもらした。








・・・それから・・・


ぽるると六郎とレオは、お互いを尊重しながら、
力を合わせ、あらゆる事件を解決した。


3人で、解決できない事件なんてないほどだった。


次から次と来る未解決事件も、
ぽるるの直感力と六郎の誰にも負けない頭脳と分析力、
レオの権力の強さで、多くの警察を要請し、
あっという間に、解決されていく。



すでに、無敵と言えるほどの探偵事務所になっていた。



その二人の能力と実績が上に、
レオも認めざるを得なくなる。


レオの一言で、沢山の警察が動き、
警視庁からの手厚いフォローがあり、
あらゆる特殊部隊の要請も簡単なほどだった。




それが、ぽるる達の力になり、
さらに、どんな大きな事件も俊敏に解決できる事となった。



殺人を伴う、大きな事件は、
事件を解決に導き、
最後は、犯人を警察へ引き渡すまでの仕事。




そこが刑事と探偵事務所の境目なのだろう。



しかし、真実を見出していく事こそが、探偵の仕事なんだと、



刑事も探偵も、芯は一緒なんだと・・・思い知った。




小さな仕事から大きな仕事まで、幅広く、
どんな仕事も請け負った。



ぽるる、六郎、レオ、共に、
毎日が、とても充実していた。







・・・しかし・・・
クォールとクレハを見つけられないまま、
数年の時が過ぎていた。



レオは、惜しみなく、
その情報をぽるるや六郎に伝えた。



警察も、爆弾組織をかぎ回り、
数え切れないほど組織一員逮捕したが、
その中に、クォールはいなかった。


しかし、口をわらせ、
基地の場所が判明したと言う。


それは、クレハが連れ去られた
白い雪が降り積もる島のどこかだと。


そうすると、あの島が、なぜ、あれほどに、
爆弾が埋まっていたのか説明がつく。



誰にも近づけさせないように、
奴らは、いつも、基地の周りに
地雷を埋め込んでいるに違いない。





基地は判明したが、
数知れず、爆弾を持っている組織に
容易に手は出せない。



捕まえても、捕まえても、
日に日に、大きくなっていく組織に、
警察も、手も足もでない状況に追い込まれていた。



事件は、困難を極めていた。







暑い夏のある日。



ぽるると六郎は、険しい顔をし、
パタパタとうちわで扇ぎながら、
クレハ誘拐事件の手がかりを探していた。



「ごめん。ちょっと、頭冷やしてくるゎ・・」

そう言うと、六郎は、冷蔵庫の中に閉じこもってしまった。



ぽるるは、そんな六郎もかまわずに、
じっと、考えをめぐらせた。





そして、
ふと、パタパタと扇ぐうちわを止め、叫んだ。





「始めから洗い直しだっ!!」


「ハーウェルさんの所へ行くぞ!六郎!」



突然、ぽるるの脳裏に浮かび上がったのは、

あの時のハーウェルの言葉だった。


何かをまだ隠している・・・
警察を信用していないと思われる発言。


あの時は、事件が解決されずに、長引いている事で、
発した言葉だと解釈し、ぽるるは見過ごしていたのだ。



こうなったら、ひっかかると思った事は、
隅から隅まで調査をしよう!!!、
そう思い、もう一度、ハーウェルの話しを伺う為、
ぽるるは勢いよく、探偵事務所の窓から飛び立った。





パカッ。



六郎は、アイスを食べながら、
ぽるるの声に、冷蔵庫のドアを開いた。



「ヾ(- -;)ぉぃぉぃ・・・俺は飛べないんだぞ!」
「俺を置いて行くなぁ〜〜〜!」


六郎は、足早に玄関に向かい、ドアから出ると、
ビルの隙間から見える青空を仰いだ。



ギラギラとまぶしい太陽が、
空をますます青く染めているようだった。



直感で行動してしまう ぽるる。

冷静に見極めてから、実行に移す 六郎。


六郎はいつも、そんなぽるるの行動を制した。



そうしないと、
被害をこうむる結果になりかねない。



冷静かつ慎重に捜査をする必要があった。




「ぽるるーーー!待てぇーーー!」

六郎は、持っていたアイスを一気に食べ終えると、
直射日光を浴びて、
六郎は、まぶしそうに、目を細めながら、
ぽるるの飛ぶ方向へ、
マンゴーのように大きな足を、ペッタペッタと走らせた。







ハーウェルの所に着き、再度、
丁寧に当時の様子を話してもらった。



警察の事に話しを持っていくと、
やはり、不快な表情を見せ、口をつぐんだ。



一通り、話し終わり、頭を下げると、
ハーウェルの元を去った。



以前と同じ、把握された通りのセリフだった事に、
炎天下の空の下、六郎は、ため息をついた。



「洗い直すたって、無駄足じゃないかぁ」



「これ以上、何が出てくるってんだよ・・・」


「これが全てだろ」



ギラギラとした太陽の暑さが、さらに、
うざったい気分にさせ、汗を拭いながら、
六郎は投げやりな言葉を太陽にぶつけるように言い捨てた。



「組織の中にいるクォールの事は、
レオが一番知ってるんじゃないか?」


「情報は、随時もらってるし」


「その情報と・・・後は軌跡しかない」


「この組織まるごと、逮捕して、解決する事なんか」


「できやしねーよ」




「まぁ・・・俺らは、クォールさえ」
「取り押さえればいいだけだけどなw」




そんな六郎の言葉に返事もせず、
ぽるるは、真剣な表情で、
ハーウェルの家の周りをグルグルと巡回し始めた。




六郎は、『やれやれ』と、あきれ返った表情で、
木陰に腰をおろした。




ぽるるは、ハーウェルの近所の話しも聞く事にしたのだ。



そして、予感が見事に的中した。



近所の鳥の話しでは・・・



クレハが連れ去られる数ヶ月前から
連れ去られる直前まで、
ハーウェルではない男性とクレハが、
仲良く手をつないで歩いているのを見ていたと言う。



もちろん、クレハの父クォールでもなかった。



遠目ではあるが、とても優しそうな
ペンギンのお兄さんだった
とも、話してくれた。




爆弾組織の一員?


いや・・クレハを連れ去る目的で、
数ヶ月も仲良くする必要はない・・・



連れ去るんだったら、いつでも、連れ去ったはず・・・



とすると、爆弾組織の一員じゃない・・・





偽善を装っている・・・優しい・・・ペンギン・・



ハーウェルの警察に対する嫌悪感。



まさか・・・警察官・・・?



しかし、なぜ、クレハと仲良くする必要がある・・・



組織に手を貸している警官がいるのだろうか・・?!(ぅぇ




そうすれば、ハーウェルの警察へ不信感の訳が成り立つ。




・・・しかし・・・・・・!



そんな事・・・絶対にあってはいけない事だ。




一層、訳がわからなくなる頭をブンブンと振りながら、
ぽるるは、六郎の元へと戻り、事情を話した。





「なるほど、それで・・・」


「警察で怪しい奴がいるか調べるってか?」


「ぽるる、判ってて言ってるか?」


「それはな・・・」

「警察を敵にまわす事になるんだぞ」



「もし、仮に・・・警察に爆弾組織と手を組んでる奴がいて」
「捕まえて、報道されてみろ」




「警察だって、この先、信用されずに・・・非難される」


「それに・・・」
「警察との連携プレーで、」
「事件を解決してる うちらの探偵事務所だって」
「メンツまるつぶれだぜ」




ぽるるは、六郎をまっすぐに見詰め、
真剣な表情で、一言 言った。



「相手が、たとえ、警察でも」


「自分らが、どうなろうとも」






「見過ごす事はできない」と。





誤った道に進んでいる鳥がいるならば、
正しい道へ、導いて行かなくてはいけない。



その犯人が、どんなに哀れな境遇で、
どんな立場に置かれていても、
ぽるるは、目を背く事はなかった。



過ちを犯した鳥は、その罪を必ず償わなければならない。




その精神だけは、昔から変わらない。



利益や地位なんて、これぽっちも考えない
真実だけを見ようとする まっすぐな ぽるるの性格に、
六郎は、ふっと息をつくと、
「わかったw」と、笑顔で返事をした。



「友は道連れだなっ!」

「どんと、来い!!!」



何かが吹っ切れたように、六郎は、空に向かって叫ぶと、
チラっと、ぽるるを見て言った。




「おまえだったら、組織ごと、捕まえられるかもなw」




それは、いつもの冗談ではなく、
いつの間にか、六郎は、
ぽるるの真実を見る まっすぐな眼差しに、
事件解決の希望を見出していた。







しかし・・・



事件は、意外な展開にもつれこんで行く事になる。







レオの元へと行き、調査報告をいつものようにした後・・・




ぽるると六郎は、ある作戦に挑んだ。




警察をかんぐる為、レオには本当の事を伝えずに、
ある話しを持ち込んだ。




組織の一員である男が外線電話を
使用して話してたのをたまたま聞いたと、
さも本当の話しのように、六郎は、レオに報告した。






話しの内容は、


「爆弾組織の中で、仲間割れがあり、
基地内で爆破を予定している」


「日時は、明日の深夜の12時」と。




『奴らを逮捕するなら、この時間しかないでしょう』
そう伝えると、レオは、表情を硬くさせ、うなづくと、
すぐさま、内線電話で、
特殊部隊を配置させるように指示した。



その様子に、六郎は、レオに判らないように、
ぽるるに向かってニッコリ笑顔を作った。





レオは、持っていた受話器を机に静かに置くと、
窓際の遠くの風景を見つめて、言った。



「とうとう、この日が、来たか・・・」と。





今まで、レオは、鳥並みはずれた努力と苦労をし、
全てをかけて、追いかけて来た事件に違いない。





終結させようと言う レオの意気込みが伝わって来る。





ぽるると六郎は、そんなレオを見て、
すまないと言う気持ちと、
レオの凄まじいほどの気迫に息を呑んだ。





遠くに見える水平線が、蜃気楼のように揺らめいていた。

←back  
next→
メニュー

♪最期に君がいた
inserted by FC2 system