しばらくすると、俺達は、1羽の鳥に会った。 その姿は、まるで、ついきちと瓜二つだった。 しかし、性格は・・・ ついきちとは、正反対だった。 話し掛けても、ムスっとしていて返事がない。 ついきちは、ほっといて先に進もうぜと言ったが、 志爛が、それを引き止めた。 なぜなら、その鳥は、傷を負っていたからだ。 羽から、少し血がにじんでいて、弱りかけていた。 しょうがないな〜と言うような表情で、 ついきちは、泳ぐのをやめ、 志爛が浮かべた木に飛び乗り寝転んだ。 志爛は、傷ついた羽に、つぶした薬草をそっとぬった。 名前を聞くと、真っ黒な姿の彼は、ブツリと言った。 「・・・クロです」 クロは、何があったのか、口を開こうとしない。 ただ青く光る海を見続けていた。 そのうち、日が暮れ、あっという間に日が落ちていった。 「この間みたいに、波にゆらゆら揺れて 朝になったら、お菓子の国の島に 着いた━━(゚∀゚)━━! とかwないかなぁ〜〜w」 おなかをグーグー鳴らしながら志爛は、言った。 「  (´゚3゚):;*.':;ブッ 」 ついきちは、志爛の言葉に噴出した。 そんな賑やかな会話を横に、 クロは、羽をいたわりながら、 夜空に瞬いている満点の星空を静かに眺めていた。 ついきちは、そのうち話し出すんじゃね?と言い、 海の魚を取ってくると言ったままどこかへ行ってしまった。 志爛は、そのうち帰ってくるだろうと思い、 泳いで行くついきちを見送った。 「ねぇ〜クローw」 「ほらwこれあげるw」 「いらん物だからさw」 志爛は、落ち込んでいるクロを少しでも励ましたかった。 志爛の羽の中には、光っているピンク色の石。 インカローズ石。 「勇気を与えてくれる石だよw」 志爛は、クロの手を取ると無理やり渡した。 「ぁ・・・ありがとう」と、 クロは、少しかすれた声で言い、 手の中で光る石を不思議そうに見ていた。 志爛は、少し元気が出たようなクロの姿に微笑んだ。 ついきちがいつも勇気をくれるから・・・ その石は、志爛にとって、必要ない物だった。 「さぁ〜〜てwついきちw美味しい魚 取って来てくれるかなぁ〜〜www」 おなかがすいて泳げんと、言わんばかりに志爛は、 ゴロゴロと転がった。 「僕・・・」 ふと、クロの声がしてきた。 ぉ・・・ 志爛は、話し出したクロの背中に視線を戻した。 海を眺めながら、クロはプツリプツリと話し出す。 「僕ね・・・弱いんだぁ〜」 ぇ・・・? 「そんなことないよぉ〜〜 一人で旅してたじゃん!w それってすごい事だと思うよ」 「とても勇気のいることだと思う」 志爛は、クロを励ました。 実際に、志爛は、ついきちなしで一人で旅をするなんて、 本当に、自分でもできないと思っていた。 「ううん〜〜僕・・・」 「僕・・・逃げて来たんだ・・・」 「逃げて来ちゃったんだーーー!!」 急に叫びだしたクロに、志爛は驚き目を丸くさせた。 「海で、親友と遊んでたら・・・ 大きなサメが、現れて・・僕・・ 逃げるしかできなかったんだ・・ あいつ・・サメにやられてたけど・・ 僕・・・何もすることができなくて・・ 必死に逃げて来たんだ・・」 手にしているインカローズの石に ホロリと、クロの悔し涙が落ちた。 「そうか・・・」 「それは、つらかったね・・・」 そう言うと、志爛は、だまって泣いているクロの肩に そっと手を置いた。 そして、肩を並べ、静かに沈んでいく夕日を ずっとずっと見ていた。 「もっと、僕に勇気があったなら・・・」 「僕・・・強くなりたい・・・」 クロは、手にしている石をギュっと強く握り締めた。 大きく真っ赤な夕日は、 クロの心を癒しすかのように優しく照らしていた。 日が沈み、志爛は、帰りが遅いついきちに気づいた。 暗くなってから、数時間がたち、心配になり、 志爛は、ウロウロと、浮いている木の上を何度も往復した。 ついきちの身に何かあったのではと、志爛は、 近くの海へついきちを探しに行ったがいない。 数日、志爛とクロは、ついきちを待っていたが 帰ってくる気配が全くない。 とうとう・・・ ついきちは、戻らなかった。 食料も底をつき、島にたどり着かないと 飢え死にしてしまう。 クロの羽も癒え、泳げるようになった。 しかたなく、俺達は、島を探しに再び泳ぐ決心をした。 「島に見つけたら、ヒョッコリ出てくるってw あいつの事だからさw」 志爛は、不安な気持ちをクロに見せないように、 わざと、明るく振舞った。 ついきちが、いない旅。 心にポッカリ穴があいてしまったような感覚。 本当は、寂しく不安な気持ちでいっぱいだった。 目の前に広がる海が、いつもと違って見えた。 ずっと ずっと 永遠と続くのではないだろうかと・・・思えた。 行くあてもない旅。 今にも飲み込まれそうな海に、 俺は、必死に泳いだ。 水平線の先に島が見えてくるよりも、 ついきちが、泳いでいないかと、 いつになく、ついきちの姿を探し求め、 前へ前へと、泳いでいた。 海の上で数日が過ぎた。 クロもフラフラになり、 志爛も、ヘトヘトで、海面に木を浮かせて、 休憩しようと思ったその時。 「!!!」 水平線の向こうに、島がうっすらと見えていた。 それは、真っ白い雪が降り積もる銀世界の島だった。 志爛とクロは、嬉しさのあまり、 バシャバシャと一気に泳ぎ、島にたどり着いた。 が・・・・・ 俺達は、愕然とした。 雪の島には、食料がまったくないのだ。 しかも、寒くて寒くて凍え死にそうだ。 震えながら歩いていると、 一匹の青いペンギンに会った。 「ふすま いりませんか〜〜?」 ・・・・・・・ふ・・ふすま?! このおなかがすいて死にそうな時に・・ 志爛は、ガックリと肩を落とした。 「あの〜食べ物はありますか?」 クロが、話し掛ける。 「ぁーーwあるよww」 それを先に言えってのーw やれやれとした表情で、 志爛は、害虫と引き換えに暖かいスープやパン 売ってる食べ物、全て買い、 おなかがすいていた俺達は一気に食べた。 残りわずかになった害虫を眺めて、 ついきちの事を思い出す。 志爛は、一日もついきちを忘れた日はなかった。 チラチラと降り積もる雪は、 志爛の手のひらに、 乗っては消え・・・ 乗っては消え・・・ 冷たい雪のように志爛の寂しさも心に積もっていく。 志爛は、手のひらに落ちては消えてゆく雪を ただ見つめていた。 暖かいぺんぞうの家の寝床を貸してもらい、 数日がたった。 害虫も残りわずかだし、食料のないこの島では このまま居続ける事もできない。 「そろそろ、次の島に行くかぁ〜〜?」 志爛は、クロにポツリと言った。 志爛とクロが、旅立つ準備をする姿を見て、 ぺんぞうは、ペタペタとこっちへ近づいてきた。 「これ、持っていきなさいw」 それは、一本の赤いパラソル。 「何か役に立つかもしれないよw」 そう優しく言い、気をつけてと見送ってくれた。 お礼を言うと、俺達は、また、 まだ見ぬ島へ旅立った。 ←back   next→ メニュー
♪幻は灰となり

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