それから、数年間が過ぎ去った。 ひめとぽよは、たくさんの島を見つけ、 たくさんの小鳥達に会い、楽しい時間を過ごした。 出会いや別れを繰り返し、ひめとぽよは、 いつしか、大人になっていった。 そして、アタシ達は、暖かい島から この銀色の島にたどりついたんだ。 「ココ!!ここだにょ!w」 パタパタと羽を楽しそうにバタつかせて 喜んでぽよは、ひめに案内する。 「ほぇ〜〜」 ぽよの後ろを歩くひめは、 ただただ驚くばかりだった。 そこは、ぽよの生まれた島。 真っ白な雪に覆われた銀世界。 ひめは、あまりの雪のまぶしさに目を細めた。 「僕ね!ここにwこーーしてね〜w いたんだYOーーーー!!w」 ぽよは、雪の上にゴロゴロと転がりながら、 生まれた時の様子をひめに懸命に説明していた。 ひめは、その説明がさっぱりわからなかったが、 ぽよの嬉しそうな顔を見て、 ひめもまた、嬉しい気持ちになった。 ぽよは、懐かしそうに、 雪道にペタペタと大きな足跡をつけて遊んでいた。 ひめは、そんなぽよに向かって、 転がってる雪の玉をなげた。 「∩′∀`∩アヒョ」 冷たくて気持ちいい〜〜〜wwと、 ぽよは、大はしゃぎだった。 ひめとぽよは、雪合戦をした。 そして、大きな雪だるまを作った。 冷たいはずの雪が、 アタシ達には、とても暖かく感じた。 そのうち、雪がフワリフワリと舞い降りてきた。 ひめは、初めて見る光景に、 目を輝かせて見ていた。 ぽよは、「ヽヽ(≧▽≦)// 雪らぁ〜〜〜☆」と、 立ち尽くす ひめの周りをクルクルと何度もまわった。 シンシンと積もっていく柔らかで優しい雪を アタシたちは、いつまでも見ていた。 アタシ達は、その島に家を作り、 しばらくとどまる事にした。 そのうち、たくさんのペンギンの友達もでき、 楽しい毎日を送っていた。 その島にも慣れてきた矢先の出来事だった。 「ぽよぉ〜〜どこぉ〜〜〜・・・」 ひめは、一人雪深い山奥にさまよっていた。 ぽよとはぐれてしまったのだ。 「ぽよぉ〜〜〜・・・・」 降り積もった雪が、まるで行く手をはばむように、 ひめの足どりを遅くさせた。 体のしんが凍りついて、声も出なくなり、 ひめの瞳から涙があふれ出した。 ぽ・・・よぉ・・・ 足も凍りつき感覚がない。 真っ白な視界の中、 ただただ、歩き続けた。 ひめは、目の前でチラリチラリと 降り積もる雪を初めてコワイと感じた。 ひめは、歩く足を止めた。 そして、パタリと、倒れた。 ひめの気持ちも知らないかのように、 雪は、ひめの上にどんどん降り積もっていった。 ・・・ここは・・・どこ・・・? 気がつくと、ひめは、暖かな黄金の羽の中にいた。 一羽の黄金の鳥が、ひめを包み込み、 ひめの冷えた体を温めてくれていた。 そして、黄金に輝くその羽の持ち主が、 そっと、ひめに話し掛けてきた。 『あなたは、ここでは、死んではいけない』 『なぜなら、あなたの役割はまだ終わっていないから』 ひめは、よくわからないその言葉を もうろうとする意識の中ただ聞いていた。 『共にしているペンギンの元を去りなさい』 『あの者は、もっと強く成長しなければなりません』 ・・強く・・成長・・・? ひめは、ぽよの事を言ってる事がわかった。 でも・・なんで、別れないといけないの・・・? 『そして、時が来た時、そのペンギンを・・・』 ふと、ぽよの笑っている顔が浮かんだ。 離れたくないーーーー!! ひめは、あまりにも、気が動転して、 最後の言葉を聞き逃してしまった。 最後の言葉と言葉の意味を聞き返そうとした、 その瞬間。 金色の羽がフワリと動き、空高く飛び立った。 黄金の大きな翼を持つ鳥は、静かに、 大空に向かってヒラリヒラリと、 舞いながら飛んでいく。 ひめは、ただ、それを呆然と眺めていた。 夢を見ているようだった。 しかし、夢ではない。 ひめの体には、光る黄金の羽が一羽ついていた。 その残していった羽をそっと、手に取り、 ひめは、黄金の鳥が飛び去った夜空を眺めていた。 しばらくすると、ぽよが、ひめを発見し、 転びながら、遠くから走って来た。 寒くない?大丈夫?と心配そうに聞き、 ぽよは、両手でひめの手を取って暖めてくれたが、 あれだけ寒く凍りついた体は、 不思議と暖かさをおびていた。 ひめは、再び夜空を見上げた。 夜空の星たちが、何事もなかったかのように 静かに瞬いていた。 その日から、ひめはボンヤリすることが多くなった。 どうすればいいのかわからかったからだ。 このまま、ぽよの前からいなくなっていいのか・・・ ひめには、わからなかった。 何も知らないぽよは、 隣で、積み木をせっせと運びながら、 コケっと転んでは、くったくのない笑顔を向けてくる。 頼りないが、ひめは、そんなぽよの 純粋すぎるその生き方が好きだった。 いつしか、ひめは、ぽよに恋よりも 深い愛情を感じ始めていた。 しかし、ぽよは、それに全く気づかない。 いつでも無邪気に振舞うぽよに、 腹がたつ日もあったが、 ひめは、それでもいいと思った。 だって・・・ それが、アナタらしさだから・・・ ひめの優しい瞳は、ずっと、ぽよを追っていた。 ―――数日後――― ひめは、寝ているぽよの頬にそっとキスをすると、 まだ日が上がらない朝焼けの中、 その島から去って行った。 ひめは、片手に光る黄金の羽を見ながら、 これで良かったのだと、 薄暗い海をただひたすら泳ぎ続けた。 ひめは、ぽよがいる南極の氷の島から、 北へ北へ進んだ。 できるだけ、遠くに行きたかった。 この張り裂けそうな想いが、 ぽよへ届かないくらい・・・遠くへ・・・ ひめの涙は、頬につたっては、 波にさらわれていった。 涙で前が見えない。 ひめは、目の前に広がる海をただ、 無心に泳ぎ続けた。 ←back   next→ メニュー
♪鳴動-春-

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