マーは、果てしなく旅を続けた。 ゆずと約束したクリスタルの石を手にするために・・・ ゆずの夢だからといって、マーはこの勝負に 負けたくなかった。 ひたすら、石を求めて、さまざま島を訪れ、 隅から隅まで、探し続けた。 砂とサボテンだけが広がる砂漠の島では、 恐ろしく大きなサソリと遭遇し、一人で、 倒さなければならなかった。 いつものバカ力のゆずがいないので、 少し手間取ってしまったが、マーは倒す事ができた。 マーのその視界には、いつも、 今まで一緒に戦っていたゆずの面影があった。 楽しく戦うゆずの姿が・・・ しかし、今一人、戦わなければならない。 マーは、目の前のたくさんの敵に、胸を張った。 それは、ゆずもまた、同じことだった。 数え切れない敵を倒し、 ただでさえ強いマーとゆずは、 一人で旅を続けることで、 メキメキと更に力をつけていった。 湿った風が吹き、いつもとは違う 真っ赤に染まった大きな月が、 奇妙に光っていた夜の事だった。 マーが、眠りにつこうとしたその時。 深緑色した一羽の鳥 すずみが舞い降りてきた。 闇市だと言う。 すずみは、マーの目の前に沢山の怪しげな物を並べてた。 「さぁ!wココに並べた物は、どれも秘蔵品だよっ!」 すずみが、どぉ??と伺うように、マーの顔を覗き込んだ。 その時。 ふと・・・。 一つの石が、マーの目に止まった。 しかし、クリスタルではない。 ブルーに光る石だった。 それに気づき、すずみは、その石を手にすると、 「お客さん!!目の付け所がいいねっ!w」 「これは、ラピスラズリと言う石でねw」 「これを持つと、あなたを守ってくれますよw」 と、うまい口ぶりで、石をマーの目の前に持ってきた。 そう、 それは、最強の守護石だった―――。 闇市で、少し高めだったが、 マーはそれを買う事にした。 それを買わなければいけないと・・ 感じたからだ。 すずみが、飛び去って行った後も、 マーは、引き付けられるようにして買った その不思議な石をただ見ていた。 マーは、何かを感じ、表情を曇らせた。 赤い月が、マーの翼の中にある その石をキラリと光らせた。 マーのその嫌な予感は的中してしまった。 ある嵐の日、ゆずの噂を聞いた。 黒い風を武器にする鳥が島を支配している と。 マーは、耳を疑った。 それは・・・ ゆずだと、マーには、ハッキリとわかった。 しかし、あの明るくまっすぐな ゆずが、ナゼ・・・。 マーは、その噂が本当なのか、 この目で確認するため、 大雨が降る中、 嵐にも負けないその力強い翼を広げ、 強風の風を切り、ゆずがいる島へと飛んだ。 しばらく進むと、雨が弱まり、灰色の空の下、 ゆずがいるであろう島が見えてきた。 白い建物が点在していた。 島の小鳥達は、その建物を懸命に建てていた。 その足元には、頑丈な鎖がつながれいる。 奴隷として働かされているようだった。 あまりにもひどい状況に、マーは、 ゆずではないように願った。 しかし、その願いはあっさりと打ち砕かれた。 マーの目の前には、 鳥達を脅している ゆずの姿があった。 ゆずは、あの頃のような瞳ではなかった。 何も写ってないかのような 冷ややかな瞳をしていた。 その姿に、マーは言葉もでない。 そのゆずの曇った瞳が、マーを見つけると、 ニヤリと笑みを浮かべながら、近づいてきた。 「やぁ〜、まだ、石ころ探す おままごとでもしてるのかい?」 まるで、マーをバカにするかのような瞳で、 大声で笑い出した。 マーは、そんなゆずを寂しげな目で見つめた。 そして、翼に力がこもった。 遠く離れていても、心は一つだと思っていたからだ。 こんなゆずじゃない!!! あの時のゆずではない!!! 本当のおまえは、 まっすぐな心と瞳を持っていたじゃないか!!! 「ゆず!!目を覚ませ!!」 そう言ってくるマーを、ゆずは、煙たい目で見た。 「じゃあ、この際だから、マー」 「おまえを握りつぶしてやるよ」 「俺のする事に文句のある奴は、こーしてやる」 大きなゆずの翼が、宙をかくと、 鋭い黒い風が凶器となって、 マー目掛けて吹き抜けた。 マーの羽が、バサバサと抜け落ち、血が飛び散った。 しかし、そんな事では、マーはひるまない。 宙を舞いながら、戦う2人を見て、 島の鳥達は、鎖をつけたまま逃げ惑った。 マーは、鳥達が被害に合わないように、 島の近くの離れ島まで飛んだ。 ゆずは、マーを逃がすものかと、追ってきた。 そして、何度も黒い風が、空を切り、 マーの体に沢山の傷を負わせた。 マーは、ゆずと戦いたくなった。 しかし、ゆっくりと血を流したその翼で 大きく円をかいた。 辺りは、光に包まれ、ゆずをも包むと、 一気に全てを破壊した。 それでも、ゆずは、その光の中で、 「こんなチッポケな術じゃ、俺を倒せねーぜ」 そう言って、 ニヤリと笑うとマーに見せびらかすように、 翼の中に光る拳くらいはある 大きいオブジディアンを輝かせた。 「!!!!!!!」 マーは、その石がなんだか知っていた。 その石に屈しない強い心を持ち合わせていないと、 身に付けるのは、あまりにも危険な石だった。 ゆずは、石の魔力に取り憑かれていたのだ。 「クリスタルなんてそんな石っころよりも、 こっちの方が何倍も強いんだぜ??知ってたか??」 あはは!!と、ゆずは、勝ち誇ったように、 空を仰いで笑いだした。 確かに、ゆずの体は、あの光の刃に包まれたのに、 まったく血を流していなかった。 痛くもかゆくもねーぞ!! そう言うと、ゆずは、更にマーに攻撃してきた。 ゆずの方が、圧倒的に力が強かった。 まだ、飛ぶ力はあるマーは、黒い風を 軽い身のこなしで、スルリとかわしていったが、 容赦ないゆずの攻撃は、マーの体を引き裂いていった。 どうにかして、あの手の中の石をゆずから、 離さなければ・・・ マーの体からは、沢山の血が流れ、 徐々に視界が揺らいでいった。 あきらめたくない――!! もう・・・ これしかない!! 無謀にも、マーは、ゆずに突っ込んで行った。 幾千もの風の刀が、マーの体を刺した。 マーは、どんなに体が傷ついても、 どんなに血を流そうと、 ゆずを助けたかった。 だって・・・ 目に見えない大切なことを教えてくれた 俺のたった一人の・・ かけがえのない・・友人だから・・・ 自分の命を引き換えにしてでも・・ ゆずを助けたい―――。 そう願ったその時だった。 「!!!!!!!!!」 マーがいつしか買った あのラピスラズリ石が、 突然、すさまじい眩しさで光りだしたのだ。 視界を真っ白にさせるほどの光に、 ゆずは、翼で目を覆った。 マーもその眩しさに、何が起こったのかわからない。 気がつくと、マーの翼の中には、 あの日、ゆずと約束したクリスタルの石が光輝いていた。 そして、満ち溢れていく力をマーは感じていた。 その光をまといマーは、力をみなぎらせ、 まっすぐな眼差しで、ゆずへと突っ込んで行った。 ゆず――!!目を覚ませ―!!! マーのそのパワーは、計り知れないものだった。 島の木々、全てをなぎ倒し、 遠くの建物さえも吹き飛ばした。 あまりの眩しさと力の強さに、 ゆずは、恐れ戦き、吹き飛んで行きそうな 自分の体を必死にかばった。 そのマーから放たれる光は、 あの輝いていた日々に、 ゆずから教えてもらった ――― 希望の光だった ――― それは・・・ 全ての闇さえ吹き飛ばしてしまう光。 氷の未来さえも七色に変える希望の光。 マーは、その光を手に、ゆずの闇を全て燃やした。 そして、 すさまじい音をたてて、 マーの翼の中で光沢に光り輝くクリスタル石の力と ゆずの翼の中で黒く光り輝くオブジディアン石の力が、 ぶつかり合い ゆずの手の中のオブジディアン石が、 パキッと音を鳴らして真っ二つ割れた。 あまりのマーの力に、ゆずが吹き飛び、 白い建物のガレキにぶつかり、バサッと身を落とした。 オブジディアン石は、魔力をなくし、 黒い光のおびを徐々になくしていった。 ←back   next→ メニュー
♪Fairy tale

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